「HP Digital Manufacturing Summit 2024」参加報告 少量多品種生産を実現する製品と事例
2024年10月24日(火)に株式会社日本HPが東京で開催した「HP Digital Manufacturing Summit 2024」に、シェアラボから丸岡が参加した。今回のイベントでは、AM業界の最新動向や技術、HPの3Dプリンティング・ソリューション、最終製品化の国内・海外事例、ユーザーの実体験に関する講演と展示が提供された。(上画像:日本HPイベントウエブサイトhttps://jp.ext.hp.com/printers/3d-printers/event/digital_manufacturing_summit2024/より引用)
日本HP 概要
HP Inc. / 日本HPは1939年創業の米国ヒューレット・パッカードカンパニーから、2015年の分社により誕生。現在、世界170か国以上でPC、プリンティングおよび付随するサービス、ソリューション事業を展開。国内ではPCの東京生産など、日本市場に根差した事業を推進。3Dプリンティング事業では、優れた造形品質と高い生産性を実現する「HP Jet Fusion 3Dプリンティングソリューション」により、ものづくりを試作から最終品の製造までトータルで支援し、製造業のデジタル化を促進する。
「HP Digital Manufacturing Summit 2024」講演の要点
まず、今回の機会を与えていただいた 日本HP の皆様と講演、参加をされ貴重なお話を伺った皆様にこの場を借りて感謝の意をお伝えしたい。主な講演と要点を以下にお伝えする。
開会挨拶
株式会社日本HP 代表取締役 社長執行役員 岡戸 伸樹 氏
日本HP PC、プリンターの専業 製造業DXに貢献
- 日本HPはPC、プリンターの専業企業で製造業DXに貢献する
- 最近ユーザーから2件のプレスリリースがあった
10月16日 「SOLIZE株式会社「Process Developmentパッケージ」を導入し、最終製品適用サポートおよび装置販売・導入、装置検討用ベンチマークの受け付けを開始」
10月22日 「SUBARUコンセプトカーの部品製造にHP 3Dプリンティングソリューションを採用」 - アナログをデジタルに置き換える点でデジタル印刷とAMの共通点がある
- 作るためのインプットはデジタル アウトプットはモノの特徴
- 成長曲線がある すり合わせが必要 下流工程に波及効果
- 成長曲線において先行者利益(First Mover Advantage)があり、今日のユーザー講演者はそのような方々である
基調講演
「未来のモノづくり~デジタルとフィジカルの交差点(技術の融合によるパラダイムシフト)」
株式会社シグマクシス 常務執行役員 デジタル製造担当/AM研究会事務局 桐原 慎也 氏
- 21世紀のテクノヘゲモニー(技術覇権国)の変遷 産業革命での欧州から高度経済成長のアメリカ・日本を経て、デジタル化のアメリカ・中国
- アルファベット、活版印刷、に続くデジタル技術は3度目の情報技術革命
- アニメ、音楽、映像のデジタル化からコミュニケーションのパラダイムシフトが起き、今後はモノ・フィジカルサービスのパラダイムシフトが起こる
- 兆しとして ①デジタルツイン×Robotics(人材不足から第4次ブーム) ②AM×デジタル×専門的知見
- 方程式 AM+デジタル+専門的知見=社会課題解決 潜在ニーズ充足
HPソリューションセッション
株式会社 日本HP 3Dプリンティング事業部 営業部 部長 宮内 大策 氏
- HP Multi Jet Fusionの海外活用事例を紹介
- 自動車
- ワイヤーハーネスは10年で複雑化 1台当たりコネクター数も500→1000個
開発試作時のテストボードコネクターホルダー、ハーネスガイド、グリッパーに活用 - GM 2022 Chevrolet Tahoeのスポイラーシール 金型修正完成までのブリッジプロダクションに活用
- ワイヤーハーネスは10年で複雑化 1台当たりコネクター数も500→1000個
- 工作機械・ロボット
- 飲料缶を流して反転させるKRONES社ツイストコンベアなど製造装置部品に活用
利点は短いリードタイム、デジタル在庫管理、オーダー数の制限なし
- 飲料缶を流して反転させるKRONES社ツイストコンベアなど製造装置部品に活用
- コンシューマー・医療福祉製品
- メガネフレーム、固定装具やリハビリ装具
- 医療系展示会OTWORLD(ドイツ)ではMJF使用20社が出展
- 背景に強度、耐久性、軽量、生体適合、各種認証 パーソナライズ+高品質+効率的な後工程
- MJFの特長 ①効率性 ②高く等方性強度と気密性(肉厚1.5mmで耐20気圧) ③サポート構造不要で形状自由 ④サステナブルな材料
- 自動車
- 新製品MJF 5600シリーズ
- 寸法精度再現性向上 Process Development パッケージオプション オープンパラメータ提供
- 新材料 PA12ESD(導電性) PA12Smooth(リサイクル率85%まで) PA12W (白とライトグレー色)
特別講演
「カーデザイン領域における量産部品への3Dプリント活用の現在地」
株式会社SUBARU 部品用品本部 アクセサリー企画部 デザイングループ 主査 須崎 兼則 氏
- 現代は選べる楽しさ 共創の時代だが、自分で買いたかったスバル車の選べたフロントグリルが1種類だった
- 今の部品製造は成形→輸送→在庫管理 これからは プリント→輸送 カーボンニュートラル&ものづくり革新へ
- コンセプトカーの部品製造にHP MJFを採用した例を紹介 フェンダーにアクセサリースポット追加
- MJFの評価 面の平滑さ ザラザラ感が逆にシボっぽい 加工速度 リサイクル性 サポートレス
- 部品として単一材料で作れるとリサイクル性が良い
- MJFへの期待 材料バラエティ増加 自動車部品に多いシボ表現性 コスト改善
- 未来に向けて
- 世の中の「製品は均一」「表面は平滑」「量産意匠部品に3Dプリント品は使えない」というような価値観を変える
- 固定概念からの脱却 デザイナーも価値観を変化させよ
その他の講演
HPテクニカルセッションの後、3Dプリンティング・パートナーセッション(SOLIZE株式会社、リコージャパン株式会社、株式会社YOKOITO、合同会社DMM.com、八十島プロシード株式会社)、3Dプリンティング事例セッション (有限会社 飯田ピアノ、株式会社 金星)から講演があった。
まとめ
HP MJFについては、シェアラボでもSUBARUの事例をFormnext Tokyoの記事や、以下の参照記事のとおり、国内外での実用品製造にMJFが活用されたニュースをお伝えしてきた。加えて今回のセミナーでも様々な活用方法と、さらなる活用のための新製品、新材料について知ることが出来た。HP社の方向性としても、「特定の用途に対し優れた装置と材料」ということを今回特にアピールされており、最近の3Dプリンターメーカーにも見られる「万能より用途特化製品」へシフトしている傾向が見られ、これは特に少量多品種生産にAM活用を広げるには重要かつ有効なことであり、好意的に受け取られる方も多いようであった。今後もユーザーの期待に応える、装置と材料の改良改善に対するHP社の取り組みに期待し、注目していきたい。
関連記事
設計者からAMソフトウエア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、AMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしていきます。