米国の産業技術投資会社であるAnzu Partners(アメリカ合衆国ワシントンD.C.)の関連会社が、デジタル砂型鋳造のリーダーであるExOne GmbH(ドイツ・ゲルンハウゼン)および株式会社ExOne(神奈川県、以下「ExOne」)を買収することについて、米国の裁判所による承認を得た。これにより、顧客、サプライヤー、従業員に対し、今後の事業運営における安定性と継続性が確保される。今回の裁判所承認には異議はなく、控訴も見込まれていないことから、両当事者は直ちに取引の実行に着手する見込みである。(上部画像はAnzu Partnersのプレスリリースより。出典:Anzu Partners)
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ExOne買収後も経営陣維持し顧客・サプライヤーとの関係を継続
デジタル砂型鋳造に強みを持つAM企業として知られるExOneは、2021年8月11日にDesktop Metalの傘下に入っていたが、Desktop Metalが米国連邦破産法第11章(チャプター11:破産保護申請)の適用を申請し親会社にあたるNano DimensionがDesktop Metalの資産取得を行わないという戦略的判断を発表したことで、その動向が注目されていた。そんな中、買収に名乗りを上げ米国連邦裁判所の許可を得たAnzu Partnersは事業全体の継続性確保に強い意欲を示している。
ディープテック系ベンチャーキャピタルAnzu partnerが買収に名乗り
Anzu Partnersは、クリーンテック、産業、ライフサイエンス分野の技術企業に投資するアメリカの投資会社だ。産業変革の可能性を秘めた企業を対象にしており資本の提供だけでなく、事業開発、市場戦略、国際的ネットワーク、オペレーション面でも、起業家の技術革新の開発と商業化を支援してきたという。2024年時点で約10億ドルの運用資産を持ち、アトランタ、ボストン、サンディエゴ、タンパ、ワシントンDCに50名以上の専門家を擁する。
Exoneは砂型3Dプリンター分野で日本においても多数の導入実績を持っており、 2025年1月27日に国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構から「経済安全保障重要技術育成プログラム/高度な金属積層造形システム技術の開発・実証焼結型積層造形とデジタルプロセス設計を組み合わせた金属3Dプリンタシステムの研究開発」を受注するなど存在感を示してきた。
ExOneの顧客およびサプライヤーは、既存の関係、契約、サービス水準を維持したまま、引き続き一貫したサービスと協力関係を期待できる。ExOne GmbHのマネージングディレクターであるエリック・バーダー氏、ならびに株式会社ExOneのマネージングディレクターである横山 健 氏は、それぞれ現職を継続するという。
3Dプリンティングの未来へ向け安定性と信頼関係の強化を表明
ExOne GmbH マネージングディレクター エリック・バーダー氏はこう述べた。
「1995年以来、ExOneは鋳造分野をはじめとする産業向けに強力な3Dプリンティングソリューションを提供し、革新を可能にしてきた。当社の産業用バインダージェット式砂型3Dプリンターは、世界で最も信頼されるシステムとして、お客様の厚い信頼を得ている。私たちは、この基盤の上にさらなる発展を重ね、デジタル鋳造の未来を切り開くことに意欲を持っている。」
対して、Anzu Partners マネージングパートナー ウィットニー・ハリング=スミス氏は以下のように述べる。
「ExOneの顧客およびサプライヤーとの強固な関係を高く評価している。我々の最優先事項は、安定性を確保し、既存の約束を守り、信頼できるパートナーシップをさらに築き上げることである。」
ExOne、Anzu傘下で現体制維持か
ExOneは、今回の買収後も、顧客が製品、スペアパーツ、消耗品を従来通りの窓口から注文できる体制を維持する方針である。万一、運営上のトラブルが発生した場合には、迅速に対応する。経営陣も現体制を継続し、既存の契約やサービス水準を堅持することで、顧客・サプライヤーの信頼を守る構えだ。今後は、Anzu Partnersの資本力と経営支援を背景に、ExOneが強みとするバインダージェット式砂型3Dプリンター技術をさらに進化させ、デジタル鋳造の適用領域を拡大することが期待される。これにより、鋳造業界における技術革新と市場拡大を加速させ、世界的リーダーとしての地位を一層強固なものとする見通しである。
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