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菌糸体ベースの3Dプリント家具を発表 ― Buřinka

菌糸体ベースの3Dプリント家具。

3Dプリントによる建設を手掛けるチェコの企業Buřinkaを中心とする研究グループは、菌糸体を材料に3Dプリント製の型に充填することで環境に優しい建材・家具製品の開発に取り組んでいる。この技術は、持続可能性と環境への配慮を両立させることができる可能性を秘めている。(上部画像は菌糸体ベースの3Dプリント家具。出典:Buřinka)

キノコ由来の材料を3Dプリント製の型で自由な形状に加工

樹脂、金属、セラミックなどの工業用材料の他、コンクリートや食物、細胞まで材料にするなど3Dプリント技術の幅は広い。そして現在進行系で材料は拡大を続けている。今回取り上げるのは、そんな材料技術の最先端研究の一つとしてキノコの菌糸体を建物や家具の材料に活用しようという取り組みだ。

独特な風合いと肌を持つ菌糸体ベースの材料
独特な風合いと肌を持つ菌糸体ベースの材料(出典:Buřinka)

チェコ共和国の企業、Buřinkaは3Dプリントによる建設を手掛ける企業で、MYMOという菌糸体研究の専門家と協力して、SAMOROSTプロジェクトを進めている。マイココンポジットと呼ばれる菌糸体ベースの材料は、軽量でありながら強度が高く、熱絶縁性、耐火性、撥水性を持っている。また、生物分解性があり、環境に優しいという特徴も持つという。

耐熱性を持つランプシェード
耐熱性を持つランプシェード出典:Buřinka)

キノコの菌糸体は、根にあたる部分だが、絡み合った菌類のフィラメントとも言うべき組織だ。この菌糸体はセルロースを餌として成長する。おがくず、紙、ボール紙など、もう使用できないと考えられている材料の中で増殖することができる。廃棄物を材料に菌糸体が成長するため、3Dプリンターで様々な形状の型を製作し、菌糸体とセルロースを含んだ廃棄物を充填することで、自由な形状に加工できる。その後、乾燥や加熱を行うことで菌糸体は死滅するが、形状は維持されるため、塗料や薬剤を含浸させることで、建材や家具の材料として利用できるようになるという。

胞子体を活用した新材料の製造プロセス
胞子体を活用した新材料の製造プロセス出典:Buřinka)

サステナブルな建材としての菌糸体

菌糸体を基にした建材は、生分解性が高く、製造過程でのエネルギー消費も少ない。これにより、従来の建築資材と比較してCO₂排出量の削減が期待される。また、菌糸体は成長速度が速く、低コストでの生産が可能であることから、経済的にも魅力的な選択肢となる。また材料としての特性でも問題ない。

  1. 強度:同じ重さのポリスチレンなどの従来の材料よりも高い強度。曲げ性能はコルク程度。
  2. 断熱性:優れた断熱性能を発揮
  3. 耐火性:一定の耐火性を保持
  4. 超疎水性:水をはじく。
  5. 生分解性:生分解が可能
  6. 健康安全性:生体適合性があり安全。

特にキノコが材料ということもあってアレルギーや毒性が気になる方もいるだろう。しかし、胞子体だけの段階ではアレルギーを引き起こす胞子は生成されないということで、胞子体を熱処理・乾燥処理を行うことで健康への安全性を保つことができると開発者は見解を示しているようだ。

環境影響の軽減と将来展望

仕上材以外にも断熱材などの用途にも利用できるという
仕上材以外にも断熱材などの用途にも利用できるという出典:Buřinka)

菌糸体を使用した3Dプリント技術は、サステナブルな社会の実現に貢献する可能性を持ち、建築業界にとどまらず、家具や日用品など、さまざまな分野での応用が期待されている。

一方で新しい材料の一般的な懸念事項として、長期的な耐久性、生産に要する期間やコスト、期待できる耐用期間などの立証が考えられるだろう。また、生物由来材料のため、環境条件によるカビや虫などの影響や、未知のアレルギー反応などが潜在的なリスクとして存在するかもしれない。

業界からの期待と課題

菌糸体3Dプリント技術は、環境問題への解決策として大きな期待を集めているが、まだ広範な商用化には至っていない。今後の材料性能の向上やリスク評価や対策も研究が進むうちに公開されていくことができれば、環境負荷が低いものづくりが可能な新しい材料として幅広い用途に活用できるかもしれない。

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