脱炭素社会へ!バイオマスプラスチック活用の環境配慮型家具をAM生産
日本のオフィス家具メーカー株式会社オカムラの「Up-Ring」シリーズが、2023年11月、公益社団法人日本インダストリアルデザイン協会(JIDA)主催の「JIDAデザインミュージアムセレクションvol.25」に選定された。このシリーズは、環境省の委託事業として実施されたプロジェクトの成果に基づき、慶應義塾大学田中研究室とのコラボレーションを経て市場に投入されている。(上部画像はバイオマスポリエチレンを造形する様子。出典:オカムラ社)
「Up-Ring」とは
オカムラ社はオフィス家具を中心に生産する日本の代表的なメーカーの一つだ。同社は、社会的責任を果たす企業として、環境への影響を考慮した製品開発に力を入れている。
そんなオカムラ社がバイオマスポリエスチレン材料で慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターとのコラボレーションにより開発したのが「Up-Ring」シリーズだ。2018年から2020年にかけて行われた環境省の委託事業「バイオポリエチレン家具プリント製造実証事業」の成果に基づき開発を行ってきた。バイオマスポリエチレンを原料とし、3Dプリンターを使って生産する家具「Up-Ring」シリーズは、脱炭素社会の実現に向けての新しいチャレンジだ。
今回リリースされた「Up-Ring」シリーズはそんなバイオマスプラスチックを活用した家具製品で「ローバックチェア」と「ハイバックチェア」の2つのタイプの椅子とカフェテーブルがラインナップされている。カラーバリエーションは4色で用意されており、サイズはローバックチェアが幅430mm、高さ641mm、ハイバックチェアが幅430mm、高さ647mmとなっている。
バイオマスポリエチレンについて
材料に用いられたバイオマスポリエチレンはサトウキビの非可食部を発酵させバイオエタノールを作り、脱水、重合することで製造。粒状のペレットの状態で保管されており、反りを防ぐためのフィラーや着色料と混合され京都の3Dプリンターメーカー、エス.ラボ社のペレット式3Dプリンターで造形されている。
3Dプリントでは、サトウキビ由来のポリ乳酸(以下、PLA)もよく使われる材料だが、ポリエチレン(以下、PE)はPLAにくらべ耐熱性が高く、強度にも優れる上に、柔軟性がある。なかでも椅子は人が座る際の座り心地も求められる。硬質なPLAではできない座り心地もPEには期待できる。
物性 | ポリエチレン(PE) | ポリ乳酸(PLA) |
---|---|---|
耐熱性 | 約80〜120℃ | 約60℃ |
強度 | 高い | 中〜高い(剛性はあるが脆い) |
柔軟性 | 柔軟 | 硬質 |
分解性 | 生分解性は非常に低い | 産業的堆肥化で生分解性あり |
主な用途 | 包装材料、容器、配管など | 使い捨て食器、医療用途など |
社会・経済的意義
株式会社オカムラの「Up-Ring」シリーズは、先進的な3Dプリント技術と環境に優しい素材を用いることで、新しい価値を創造している。製造に3Dプリンターを利用することで、金型不要のものづくりが可能になることから製造ロットが1品からでも生産可能だ。納品場所に近い拠点で製造することで、物流時に発生する環境負荷を削減することもできるため、機能性やデザイン性だけでなく、環境負荷の低減という社会的課題の解決にも貢献する取り組みだ。
サステナビリティの関連記事
今回のニュースに関連するものとして、これまでShareLab NEWSが発表してきた記事の中から3つピックアップして紹介する。ぜひあわせてご覧いただきたい。
国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。