セレンディクス、万博実績モデルをベースに「住宅キット」販売へ

2026年1月6日
出典:セレンディクス
出典:セレンディクス

3Dプリンター住宅を手がけるセレンディクス株式会社は、3Dプリンター住宅「serendix5(セレンディクス・ファイブ)」シリーズの住宅キット販売を2025年12月から開始した。今回のキットは、大阪・関西万博で実際に建築・使用されたモデルと同一仕様で、実績のある構造・設計をそのままベースとしている点が特徴だ。価格は、延床面積50㎡相当モデルの壁パーツ(10点)で税込330万円から。北海道を除く全国で販売され、一般施主に加え、建築業者への提供にも対応する。完成住宅として販売する従来モデルとは異なり、「部材提供」を前提とした新しい住宅供給の形を打ち出した。

被災地の声から生まれた「キット販売」という選択肢

セレンディクスは2022年3月、初号機「serendix10」を延べ作業時間23時間で完成させて以降、3Dプリンター建築の実用化を着実に進めてきた。2024年9月には、能登半島地震の被災地である石川県珠洲市において、2人世帯向け住宅「serendix50」を販売し、居住用途での実績も重ねている。

能登で建設した「serendix50」(石川県珠洲市)出典:セレンディクス
能登で建設した「serendix50」(石川県珠洲市)出典:セレンディクス

一方、被災地では人手不足や資材価格の高騰により、住宅再建コストが依然として大きな課題となっている。そうした中で、「施工は親戚や知人の業者に頼むので、3Dプリンター部材だけを提供してほしい」という要望が複数寄せられた。

これを受けて同社が打ち出したのが、施主自身が施工体制を組むことを前提とした住宅キット販売である。施工を分業・最適化することで、建築費用全体を抑えることを狙う。

万博・能登で使われた「serendix5シリーズ」をベースに展開

今回キット化された「serendix5シリーズ」は、珠洲市で販売された「serendix50」や、大阪・関西万博の駐車場管理棟などと同系統に位置づけられるモデル群だ。意匠を過度に追わず、安心・安全性と機能性を重視した実用設計が特徴となっている。

キット販売モデルは、同シリーズの中でもベーシックな位置づけとされており、今後は用途や規模に応じた派生モデルの展開も予定されている。

大阪・関西万博で実際に使用されたserendix5シリーズ。出典:セレンディクス
大阪・関西万博で実際に使用されたserendix5シリーズ。出典:セレンディクス

特徴① 施主参加型の「ハーフビルド」を想定

キットには、3Dプリンターで出力された壁パーツ10点と作業手順書が含まれる。基礎工事や電気・給排水工事など、有資格者が必要な工程は専門業者に依頼し、内装など対応可能な部分は施主自身が行う「ハーフビルド」にも対応する。

施工サポートは基本的にリモートで提供され、電話相談は無償。現地での直接指導が必要な場合は、オプションとして対応する仕組みだ。

特徴② 壁パーツ構成による短期施工

3Dプリンターで製作された壁パーツを組み上げるシンプルな構造により、標準工期は約24時間(実作業3日間)とされている。屋根はオプション扱いで、金属屋根や木造屋根を組み合わせたハイブリッド工法を採用可能。施工性と耐久性のバランスを取った構成となっている。

特徴③ 30㎡〜200㎡まで対応する設計自由度

建築面積は30㎡から最大200㎡程度まで対応し、平米数や間取りは要望に応じて調整できる。居住用途に限らず、用途展開も視野に入る。

外観はスクエア型を基調としたデザインで、周辺環境との調和を意識。屋根形状などの意匠変更も建築士監修のもとで可能とされ、建築業者によるオリジナルモデル開発も想定されている。

特徴④ キット販売に合わせた品質保証

キット部材および作業手順書に起因する不具合については、セレンディクスが保証を行う。一方、施工そのものに起因するトラブルは施工者の責任範囲となる。ただし、施工方法に関する技術的サポートは継続的に提供される方針だ。

セレンディクス株式会社 Co-Founder(共同創業者)CTO 飯田 國大 氏 コメント

住宅金融支援機構の2025年4月の調査で住宅ローンを新たに借りた人のうち、返済期間が35年〜50年の人の割合は25.5%と、前年同期比で9.5%増加しており、「50年ローン」が新たな流れとなり始めています。私たちは創業以来、この状況を変え、すべての人から長期に渡る住宅ローンをなくすことを目指してきました。

今回の3Dプリンター住宅のキット販売は、お客様自身が施工に関与することで「建築費問題」に新しい選択肢をもたらします。特に能登半島地震で被災された地域では、建築費の高騰が深刻な社会問題となっています。石川ではこのキット販売に関して6棟の購入希望(2025年12 月現在)をいただいております。当社の技術とシンプルな構造により、手の届く価格で質の高い住まいを提供し、復興の一助となれることを願っています。

シェアラボ編集部コメント

3Dプリンター住宅は「完成住宅を買うもの」というイメージが先行しがちだが、今回のキット販売は、施工の自由度とコスト調整余地を施主側に戻す試みといえる。特に人手不足や建築費高騰が深刻な地域においては、現実的な再建手段の一つとなる可能性がある。3Dプリンター建築が、住宅供給の仕組みそのものをどう変えていくのか、今後の展開に注目したい。

用語解説

■ 3Dプリンター住宅
建設用の大型3Dプリンターを用い、コンクリートなどの材料を積層して壁や構造体を造形する住宅。型枠を使わずに施工できるため、工期短縮や省人化が可能とされている。
■ serendix5(セレンディクス・ファイブ)シリーズ
[セレンディクス株式会社](chatgpt://generic-entity?number=0)が展開する3Dプリンター住宅の製品群。能登半島や大阪・関西万博での実績をもとに、安心・安全性と機能性を重視した実用モデルとして設計されている。
■ 住宅キット販売
完成住宅として提供するのではなく、建築に必要な部材と施工手順書をセットで販売する方式。施主自身が施工体制を組むことで、建築コストの抑制を狙う。
■ ハーフビルド
基礎工事や設備工事など専門資格が必要な工程は業者に依頼し、内装など可能な部分を施主自身で行う建築スタイル。DIY要素を取り入れながら費用を抑えられる点が特徴。
■ 壁パーツ(3Dプリンター製)
建設用3Dプリンターで出力された壁部材。工場や現地で造形したパーツを現場で組み上げることで、施工時間の短縮と品質の均一化を図る。
■ ハイブリッド工法
3Dプリンターで造形した壁構造に、金属屋根や木造屋根など従来工法を組み合わせる建築手法。3Dプリンター建築の効率性と既存工法の耐久性を両立させる。
■ リモート施工サポート
電話やオンラインを通じて行われる施工支援。現地に技術者を常駐させずに済むため、人手不足地域でも施工を進めやすい。

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