可愛らしいクッキーの型を3Dプリンターで造形 ― cafe grand.pa(カフェ グランパ)
和歌山県和歌山市にある「cafe grand.pa(カフェ グランパ)」では、クリスマスやバレンタイン・ホワイトデーなど、季節ごとに販売されるクッキーに人気が集まっている。クッキーの型は3Dプリンターでつくられており、「こんなデザインのクッキーをつくってほしい」というオーダーメイドも可能。生活の身近な場面でも3Dプリンタ―が使われている例として、ShareLab読者にcafe grand.paの取り組みをご紹介する。
3Dプリンターの利点を活かした可愛らしいデザインのクッキー
cafe grand.pa(以下、カフェ グランパ)は、和歌山県の県庁近くにあるアットホームな雰囲気の喫茶店だ。姉の石川氏と妹の三宅氏の二人姉妹で経営している。ヨーグルトムースや紅茶のゼリー、ココット風の容器に入ったチーズケーキなど、思わず写真に残したくなるおしゃれなメニューが楽しめる。
なかでも人気なのが、可愛らしいデザインが目を引くクッキーだ。定番の商品はもちろん、クリスマスやハロウィン、父の日・母の日など、季節限定の商品も販売している。店内で食べるだけでなく、テイクアウトやオーダーメイドの注文にも対応している。
同店では、クッキーの金型を3Dプリンターで制作している。クッキーの型は、輪郭をかたどるだけでなく、細かな模様をつけるためにも用いられる。複数の型を組み合わせることで、世界にひとつだけのデザインがつくれるのだ。同店にしかないオリジナルのクッキーを求めて、贈り物用に購入するお客さまも多い。
カフェグランパでクッキー型の制作を担当する山下氏にインタビュー
ShareLab NEWSでは、カフェグランパでクッキーの型づくりとSNS運用を担当する山下氏に取材を行った。3Dプリンターの導入に至った経緯や導入後の変化についてうかがったので、ご紹介したいと思う。
――3Dプリンターを導入した経緯を教えてください
山下氏:私はもともとお菓子づくりが好きで、学生時代から製菓の勉強をしていました。その延長で「自分の思い描いたデザインのクッキーをつくりたい!」と思い、クッキー型をつくるために3Dプリンターの講座を受けました。
3Dプリンターの講座を受ける前は、市販されているクッキーの金型を使用したり、3Dプリンターでクッキーの型を制作している方から購入したりしていました。2021年に店舗をリニューアルしたタイミングで3Dプリンターを購入し、クッキーの型を自主制作するようになりました。
――貴社で導入している3Dプリンターの機種と価格帯を教えてください
山下氏:FLASHFORGEの「finder」モデルを使用しています。購入時の価格は約42,000円でした。
――3Dプリンター導入前と比べて、どのような変化がありましたか?
山下氏:3Dプリンターでオリジナルのクッキーをデザインできるようになったことで、全国からご予約やお問い合わせが増えました。現在は実店舗のみでの販売なのですが、県外からのお問い合わせが増えたことで、今後は通販での対応も視野に入れていきたいと思っています。そのために、通販専用の割れにくいクッキーを作り出せればと考えていますね。
――3Dプリンターを活用した今後の取り組みについて教えてください
山下氏:「結婚や出産などの内祝い用に名入れをしたい」というお問い合わせがとても多いので、そのようなご要望に応えられる体制をつくりたいと思っています。あまりにも少数でのご注文や急ぎのご注文には対応が難しいのですが、「セミオーダー式に名入れ部分を除いたオリジナルの型を作成し、ご注文いただいたあとにお名前のみの型をつくる」などの素早いご対応ができるようにと考えています。
――3Dプリンターの導入を検討している方にメッセージをお願いします
山下氏:3Dプリンターでオリジナルのクッキー型を作成したことで、目まぐるしく変わる流行や、オリジナリティを求めるお客さまの需要にとても対応しやすくなりました。
最初は「ハードルが高いかなぁ」と感じて導入をためらっていた部分もあったのですが、クッキー型をつくるという目的を定めて3Dプリンターの勉強をしたことで、3Dプリンターは私にも使える身近なものだと知ることができました。
3Dプリンターはお菓子づくりや粘土細工などの幅広い用途で活用できるので、悩まれている方がいたらぜひ導入をおすすめします。
食品業界における3Dプリンターの活用事例
クッキーの型をつくるために3Dプリンターの講座を受けたという山下氏の話を聞き、行動力がとても素晴らしいと感じた。「3Dプリンターを使いこなすのは難しそう」というイメージから、導入を尻込みしてしまう人も多いだろう。ただ、山下氏のように3Dプリンターの導入目的を明確にし、そのために必要な情報を一つずつ学んでいけば、意外と身近なツールであることに気づけるのではないだろうか。
カフェグランパではクッキーの金型をつくるために3Dプリンターを活用していたが、そのほかにも、チョコレートなどの食材そのものを3Dプリントしている事例もある。
コンピュータ上でデザインのデータを作成し、データをもとにフード3Dプリンターで食品を成形すれば、熟練の職人さながらのデコレーションが施せるようになる。3Dプリンターで高精度に食品を成形できるようになれば、現場の人手不足解消につながるだけでなく、商品の企画や改善策を考えることに時間を割けるようにもなるだろう。フード3Dプリンターについて興味のある方は、ShareLab NEWSで過去に取り上げた以下の記事もぜひご覧いただきたい。
国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。