ローランド ディー.ジー.株式会社(以下、ローランド ディー.ジー.)の子会社であり、歯科用ミリングマシンを展開するDGSHAPE株式会社(以下、DGSHAPE)は、義歯用ジェッティング方式3Dプリンターの開発を加速していると発表した。同機は2025年3月、ドイツ・ケルンで開催された世界最大級の歯科展示会「IDS 2025」に参考出展された。来場者からは高い評価と具体的なフィードバックが寄せられ、現在はそれらを反映した設計改良を進めている段階である。改良項目には、材料強度の向上、審美性の改善、造形効率の最適化などが含まれる。
目次
複数材料同時出力によるモノリシック義歯造形
開発中の装置はジェッティング方式を採用し、複数色・複数材料の同時出力を可能とする点が特徴である。これにより、義歯ベースと人工歯を一体化したモノリシック構造の義歯を一工程で造形できる。
従来は工程分割や接着工程が必要となるケースも多かったが、一体造形が実現すれば、工程短縮と品質安定の両立が期待できる。歯科技工所における生産性向上と品質確保の両面で意義のある技術アプローチである。
インクジェット技術と歯科材料技術の融合
本プロジェクトは、ローランド ディー.ジー.が培ってきた高精度インクジェット技術、歯科材料開発で実績を持つ株式会社ジーシーの知見、そしてDGSHAPEが歯科補綴分野で蓄積してきた精密3D加工技術を融合するものである。
各社の強みを掛け合わせることで、信頼性と臨床適合性を高めた製品開発を目指している。単なる装置開発にとどまらず、材料・プロセス・臨床視点を統合したソリューション構築が進められている点が注目される。
技工士不足と高齢化社会への対応
背景には、歯科技工士の高齢化と人材減少という構造的課題がある。特に先進国では技工士数の減少が顕著であり、一方で超高齢社会の進展により義歯需要は拡大傾向にある。
こうした状況下で、製造工程のデジタル化による効率化と品質の標準化は重要なテーマである。DGSHAPEは2027年の市場投入を目標に、薬事対応や臨床評価の準備を進めている。
歯科補綴分野におけるデジタル製造の進化は、技工所の生産体制そのものを再設計する可能性を持つ。今後の開発動向に注目が集まる。

編集部コメント
ジェッティング方式によるフルカラー・複数材料同時造形は、歯科用途において長年議論されてきたテーマである。特に義歯は機能性と審美性の両立が求められるため、材料物性と色再現性の両面が鍵となる。
今回の取り組みは、装置単体の性能だけでなく、材料開発企業との連携を前提とした統合型アプローチである点が特徴的である。歯科技工士不足という社会課題に対し、どこまで実効性あるソリューションとして定着するかが今後の焦点となる。
用語解説
| ■ ジェッティング方式 インクジェット技術を応用し、液状の光硬化性材料などを微小液滴として吐出・積層する3Dプリント方式。高精細な表現や複数材料・複数色の同時出力に適している。 |
| ■ モノリシック構造義歯 義歯ベースと人工歯を分割せず、一体構造として製作された義歯。接合部を持たないため、工程簡略化や強度安定の面でメリットがある。 |
| ■ IDS(International Dental Show) ドイツ・ケルンで隔年開催される世界最大級の歯科専門展示会。歯科医療機器、材料、デジタル技術などの最新動向が発表される業界重要イベントである。 |
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