7日で荷重に耐える骨足場へ、EPFLが酵素活用の3Dプリント技術を開発

2026年3月31日
出典:EPFL
出典:EPFL

スイス連邦工科大学ローザンヌ校(以下、EPFL)の研究チームは、3Dプリントによって作製した骨足場(ボーンスキャフォールド)が、わずか7日で荷重に耐えうる強度に達する新技術を発表した。本研究は学術誌『Advanced Functional Materials』に掲載されている。従来、骨代替材料として用いられるハイドロキシアパタイト(HA)は高温プロセスでの製造が主流であり、生体活性を持つ酵素などの導入が難しいという課題があった。今回の研究では、室温かつ低エネルギーで造形と鉱化を進めるプロセスを確立し、強度と生体適合性を両立した点が特徴である。

室温プロセスで実現する高速鉱化と高強度

EPFL工学部のソフトマテリアル研究所(SMaL)は、HAをベースとした3Dプリント用インクを開発した。このインクにはアルカリホスファターゼ(ALP)と呼ばれる酵素が組み込まれており、カルシウムおよびリン酸イオン溶液中で反応することでHA結晶を形成する。この酵素反応により、従来の高温焼結を用いずに材料を硬化・強化できる点が大きな特徴である。実験では、鉱化開始から4日後には1.5cm四方の面積で成人の体重を支える強度に達し、7日後には荷重構造として機能するレベルに到達した。

出典:EPFL
出典:EPFL

多孔構造を制御し骨再生を促進

本技術では、酵素を含まないゼラチン微小断片もインクに混合されている。これらは培養中に溶解し、内部に空隙(ポア)を形成する。この多孔構造により、移植後に細胞が内部へ侵入しやすくなり、新しい骨組織の形成を促進する。さらに、微小断片の量を調整することで孔隙率を制御可能であり、最大で体積の約50%を空隙とする設計も可能である。これは、海綿骨のような高い多孔性を持つ構造の再現につながる。

14日で骨形成の指標を確認

ヒト幹細胞を用いた評価では、培養14日後にコラーゲンやオステオカルシンといった骨形成関連タンパク質の発現が確認された。これにより、本材料が実際に骨組織形成を促進する可能性が示されている。また、今回の手法で作製された足場は、従来の高温プロセスによるHA材料と比較して高い強度を示し、ヒトの海綿骨に匹敵する圧縮強度を持つとされる。加えて、市販のバイオプリンターに対応可能であり、複雑形状の造形にも適用できる。

編集部コメント

今回のポイントは「室温×酵素×高速強度発現」という3点に集約される。従来のセラミック系骨材料は高温プロセスが前提であり、製造エネルギーや生体活性の両立が課題であった。それに対し本技術は、バイオ系プロセスを取り込みながら機械強度も確保している点が特徴的である。特に「7日で荷重可能」というのは臨床的に非常に重要で、リハビリ開始の早期化や患者負担の軽減につながる可能性がある。また、インクベースである点は製造業的にも示唆が大きい。将来的には「現場で注入→その場で骨再生」というワークフローも現実味を帯びてくる。バイオプリンティングは依然として研究段階が多いが、今回のように機械特性と生体機能の両立が見えてきたことで、実用化への距離は確実に縮まりつつある。

用語解説

■ ハイドロキシアパタイト(HA)
骨や歯の主成分であるリン酸カルシウム系の無機材料。高い生体適合性を持ち、人工骨や歯科材料として広く利用されている。
■ 骨足場(ボーンスキャフォールド)
骨再生を促すために用いられる三次元構造体。細胞が付着・増殖するための足場となり、最終的には新しい骨組織に置き換わることを目的とする。
■ バイオプリンティング
細胞や生体材料を用いて組織や臓器の構造を3Dプリントする技術。再生医療や創薬分野での応用が期待されている。

医療業界の関連記事

今回のニュースに関連するものとして、これまでShareLab NEWSが発表してきた記事の中からピックアップして紹介する。ぜひあわせてご覧いただきたい。

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

関連記事を探す

記事検索

1956の記事から探す

最新記事

編集部のおススメ記事