ニコンAMシナジー、米国防関連契約を獲得 航空機部品サプライチェーンの高度化へ

2026年3月27日
ニコンSLMソリューションで造形された航空宇宙部品の例(出典:ニコンSLM)
ニコンSLMソリューションで造形された航空宇宙部品の例(出典:ニコンSLM)

米国の航空・防衛分野では、老朽化したサプライチェーンと長期化する部品調達が課題となっている。こうした中、AMを活用した生産体制の見直しが本格化している。2026年3月10日、Nikon AM Synergy Inc.は、米国防イノベーションユニット(DIU)との間でOther Transaction Agreement(OTA)契約を締結したと発表した。同社のエンジニアリングサービスは、航空機部品の生産体制を再構築する「FORGE(Foundry for Operational Readiness and Global Effects)」プログラムに組み込まれる。

防衛用途で進む金属AMの実装

DIUは、国家安全保障上の課題に対応するため、軍とテクノロジー企業を結びつける組織である。新技術の試作・評価を通じて、実運用への導入を加速する役割を担っている。今回のFORGEプログラムでは、高性能航空機に使用される金属部品の生産能力向上が主な目的とされる。従来、これらの部品は鋳造によって製造されてきたが、リードタイムや供給制約が課題となっていた。金属AMの導入により、生産スピードの向上に加え、耐久性・信頼性・コストといった政府要件への対応も進められる見込みである。特に、防衛用途においては「必要なときに必要な数量を供給できる体制」の構築が重要視されている。

ロングビーチ拠点での製造・検証体制

FORGEプログラムは、カリフォルニア州ロングビーチにあるNikon AM Technology Centerで実施される。同拠点では、金属積層造形を軸に、航空・宇宙・防衛分野向けの製造および検証が行われる。ニコンは、設計から材料評価、製造、検査までを一体で提供する体制を構築しており、防衛分野の厳格な品質要求にも対応可能とする。DIUのプログラムマネージャーであるデレク・マクブライド氏は、「ニコンのエンジニアリングおよび製造能力を活用することで、生産能力の拡張とボトルネックの解消を進める」とコメントしている。

L-PBF技術と統合型AMソリューション

Nikon AM Synergyは、ニコンのアディティブマニュファクチャリング事業におけるエンジニアリング・製造サービス部門である。同社は、Nikon SLM Solutionsのレーザーパウダーベッドフュージョン(L-PBF)装置を中核に据え、設計最適化、材料認証、品質検査を統合したサービスを提供している。これにより、単なる試作ではなく量産を見据えたAM活用が可能となる。ニコンAMの技術担当副社長ベーラング・プーランジ氏は、「設計・材料・製造・検査を統合した体制により、米国および同盟国の製造基盤強化に貢献する」と述べている。

編集部コメント

防衛分野におけるAM導入は「試作」から「供給インフラ」へとフェーズが移行している。今回のFORGEのような枠組みは、単なる技術検証ではなく、実際のサプライチェーン再構築を目的としている点が特徴である。日本の製造業にとっても示唆は大きい。特に航空・重工・防衛分野では、従来の鋳造・鍛造中心の供給体制から、デジタル製造を組み込んだハイブリッド型への転換が求められる可能性がある。ニコンのように「設計〜検査までを一体化したAMサービス」を提供するモデルは、今後の産業構造を考える上で重要な指標になるだろう。

用語解説

■ Other Transaction Agreement(OTA)
米国政府が民間企業と柔軟に契約を結ぶための特別な契約形態。従来の政府調達ルールに比べて手続きが簡素で、新技術の導入や試作開発を迅速に進めることができる。
■ レーザーパウダーベッドフュージョン(L-PBF)
金属粉末を薄く敷き詰め、レーザーで選択的に溶融・凝固させることで積層造形を行う金属3Dプリント技術。高精度かつ複雑形状の製造が可能で、航空宇宙や医療分野で広く活用されている。
■ FORGEプログラム
米国防分野における航空機部品の生産能力強化を目的とした取り組み。アディティブマニュファクチャリングなどの先端製造技術を活用し、供給遅延やボトルネックの解消を目指す。

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