株式会社ヨシダ(東京都台東区、以下、ヨシダ)は、歯科医療のデジタル化を推進する3Dプリンター「SprintRay(スプリントレイ)」の国内販売を開始した。9月23日に開催されたお披露目イベント「3D Next in JAPAN」には歯科医師や技工士ら200名以上が来場し、最新のデジタルワークフローに関心が集まった。また、日本デンタルショー2025でも注目を集め、歯科用3Dプリンター市場の拡大に向けた期待が高まっている。(上部画像は3Dプリンター「SprintRay」出典:ヨシダ)
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世界で広がるデジタル歯科の波、日本でも実用段階へ
SprintRayは、米国発の歯科特化型3Dプリンターで、主に樹脂(レジン)を光造形方式で造形するシステム。
歯科医院や技工所向けに最適化された専用ソフトウェアと材料群を備え、模型・サージカルガイド・仮歯・マウスピースなどを短時間で造形できる点が特徴だ。
欧米ではすでに導入が進み、チェアサイドでの即日補綴(同日治療)を可能にするツールとして普及が拡大。
日本でも近年、医療機器としての認証取得や歯科技工のデジタル化支援が進み、ようやく実用フェーズに入りつつある。
3D Next in JAPAN に200名超が来場
ヨシダが主催した「3D Next in JAPAN」では、SprintRay製品群の実演や、歯科医療従事者による導入事例講演が行われた。
来場者は歯科のデジタルワークフロー全体を体験できる展示構成に高い関心を寄せ、会場は終日活況を呈した。
登壇した歯科医師からは「臨床現場に適した操作性と造形速度」「材料の扱いやすさ」が評価され、導入検討を進める医院も多かったという。
SprintRayのシステムは、スキャン・設計・造形・後処理までを短時間で完結できる点で、従来のラボ依存型プロセスを変える可能性を持つ。
デンタルショーでも高い注目
同社は日本デンタルショー2025にも出展し、造形デモや新素材を披露。
ブースでは「チェアサイド製作」のリアルタイム実演が行われ、臨床スピードと精度の両立を訴求した。
来場者からは「これほど短時間で補綴物が出せるとは」「技工所との分業モデルが変わるかもしれない」との声が聞かれた。
歯科医療の現場に広がる院内製造、3Dプリントが変える治療とものづくりの境界
3Dプリンターといえば工場や研究所を思い浮かべがちだが、いまや歯科医院の机の上でも治療用パーツがプリントされる時代である。設計から製造までを自らの手で完結できる環境が、臨床の現場にまで浸透しつつあるのは象徴的だ。歯科技工所やメーカーに依存していた工程を、院内で再現できるようになれば、治療のスピードや自由度は大きく変わるだろう。
そしてそれは単なる効率化にとどまらず、「誰がどこでつくるのか」というものづくりの本質を問い直す動きでもある。歯科医療という身近な領域から、3Dプリントがものづくりの概念を再定義していく。その変化は、医療と製造のあいだに新しい地平を描きつつあるように感じられる。
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