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脳損傷治療につながるバイオ3Dプリント法を開発 ― オックスフォード大学

3Dバイオプリンターとバイオインクを構成する材料

2023年10月5日、オックスフォード大学は、患者本人の大脳皮質の構造を模倣して神経細胞を3Dプリントする方法を開発したことを発表。この成果は同日、学術誌『Nature Communications』に掲載された。同研究は、バイオ3Dプリント技術が脳損傷の治療に役立つ可能性を示すものとなる。(上部画像はバイオ3Dプリンターとバイオインクを構成する材料。出典:オックスフォード大学)

脳損傷に対する画期的な治療法となる可能性

外傷や脳卒中、脳腫瘍の手術などによる脳損傷は、通常、人間の脳の外側の層である大脳皮質に大きな損傷をもたらし、認知、運動、コミュニケーションを困難にさせる。

世界では毎年約7,000万人が外傷性脳損傷に苦しんでおり、そのうち500万人が重度または致命的なケースにあるという。しかし、現在、重度の脳損傷に対する有効な治療法はない。

患者自身の幹細胞に由来するインプラントを患者に投与する組織再生療法は、将来的に脳損傷を治療する有望なルートになる可能性があるとして注目をされてきた。

マウスに移植された3Dプリント神経細胞は蛍光マーカーで標識されている(画像では青と赤)
マウスに移植された3Dプリント神経細胞は蛍光マーカーで標識されている(画像では青と赤)(出典:オックスフォード大学)

今回のオックスフォード大学による研究では、ヒトの神経幹細胞を素材に3Dプリントすることによって、2層構造の脳組織を作製した。マウスの脳のスライスに移植したところ、細胞は宿主組織と構造的にも機能的にも納得のいく統合を示したという。

このことは、患者自身に由来する神経幹細胞を使用することで、3Dプリントされた脳組織がより協力的で、より容易に患者の体内への統合を受け入れる可能性があることを明確に示したものとなる。

脳損傷の治療に役立つ可能性を示した新たな事例

今回、実験室で宿主の脳組織とうまく統合する脳組織の作製に成功したことで、バイオ3Dプリント技術が脳損傷の治療に役立つ可能性を示した新たな事例となった。

研究チームは、最初の成功の後、現在のデザインから印刷プロセスを改良し続け、人間の脳を正確に反映するために、より多くの層と複雑さを追加する予定だという。

脳損傷の治療だけでなく、薬物テスト、脳の発達テスト、認知についてのさらなる研究など、研究の可能性は広がっている。

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