北京オリンピックのCM映像に3Dプリンティング技術を活用
イギリスの公共放送局としてロンドンに本部を置くBBC(英国放送協会)は、中国の北京で開催される「2022年冬季北京オリンピック」のCM映像を、3Dプリンティング技術を活用して制作した。
ご覧になった方もいるかもしれないが、実はこの映像には3Dスキャンと3Dプリンターの技術を活用されている。どこに使用されているのか、なぜ3Dプリンターを採用したのかを解説する。
出典:GAS™ Music のYouTubeチャンネル
このCM映像はBBCのグループ会社であるBBC Creativeが企画し、ロンドンのアニメーションスタジオのBlinkinkが制作、Balázs Simon氏が監督を手掛けた。
3Dプリンターでつくる40秒のストップモーション
CM映像は、「Extreme by Nature」と名付けられた。40秒間の映像は3Dプリンターで作成したモデルをコマ撮りしたストップモーションアニメーションとなっている。
映像の中では人型のモデルと背景がスピードスケート スケルトン、カーリング、スキー、スノーボード、そしてフィギュアスケートへと変化していく。
アスリートの力強い動作を精密に再現した3Dモデルと、計算されたカメラワークを駆使して、時にはクローズアップして撮影するといったスピード感と臨場感のあるダイナミックな映像に仕上がっている。
「Extreme by Nature」には、動く部品はおろか、本物の氷や雪も一切使用されていない。ポリマー素材から3DプリントしたものだけがCM映像に使われている。
なぜ3Dプリンターが採用されたのか
モデル作成に用いられたのはSLS方式の3Dプリンター。これは粉末状の素材にレーザーを照射して焼結させる方式の3Dプリンターで、高精細かつ耐久性のある造形物を製作できるのが特徴だ。
監督のBalázs Simon氏は、「限界に挑戦する強い意志を持つ人々を尊敬しています。まさに、過酷な環境で競技に挑む冬季オリンピックのアスリートたちがそうで、そんな彼らの姿をどう表現するのかが最大の課題でした。冬季オリンピックは、雪と氷の世界という普段の生活とは異なる環境で競技が行われます。このプロジェクトの話をもらった時、アスリートたちのひたむきさをどう描き、どう活かせばよいのかを自問しました。競技する彼らが氷と雪の中で生まれ、そこから飛び出していく姿を描きたかったのです」と述べた。
そのため、1コマ1コマ忠実に再現できる3Dスキャンと3Dプリンターの技術を活用。実際のメイキング映像も公開されているのでぜひご覧いただきたいが、映像作品としてのすばらしさと同時に、造形の細かさにも目が留まる。3Dプリンターによって忠実に再現された、サラサラとした雪の質感やアスリートの筋肉質な体からは、3Dプリンティングの技術の進歩もうかがえるものになっていると言えるだろう。
関連情報
【造形方式、使用材料別】
業務用3Dプリンターの価格帯
今回使用されたSLS方式の特徴他、3Dプリンターには様々な造形方式が存在します。ぜひこの機会に確認してみてください。
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