チーズがとろける瞬間を形に ― 積彩が手がけた「BAKE CHEESE TART」新店舗什器

2025年10月15日
BAKE CHEESE TART グランスタ丸の内店
BAKE CHEESE TART グランスタ丸の内店(出典:積彩、BAKE CHEESE TART)

株式会社積彩(東京都荒川区、以下、積彩)は、チーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」のリブランディングプロジェクトにおいて、3Dプリンティングとコンピューテーショナルデザインを融合した店舗什器を制作した。テーマは「メタモルフォーゼ」。チーズが形を変えながらとろけていく様子を、流動的で重力を感じさせる造形で表現したものである。この作品群は、グランスタ丸の内、大阪髙島屋、天神地下街、EQUiA北千住の全国4店舗に展開され、ブランドの世界観を空間演出として体現している。

「メタモルフォーゼ」を空間に翻訳する試み

BAKE CHEESE TARTが掲げるリブランディングのキーワード「メタモルフォーゼ」。積彩はこの抽象的な概念を造形に落とし込み、チーズの流動性や柔らかさを感じさせるフォルムを3Dプリントによって具現化した。

出典:積彩、BAKE CHEESE TART
出典:積彩、BAKE CHEESE TART

新しいブランドカラーである「ライラックブルー」を基調に、通行客の視線を惹きつける立体的な演出を実現。二重シェル構造を用いた造形は、角度や照明によって印象を変化させ、空間全体に“揺らめき”を生み出している。内部に配置された照明は半透明素材を透過し、幻想的な光を広げる。

出典:積彩、BAKE CHEESE TART
出典:積彩、BAKE CHEESE TART

コンピューテーショナルデザインが生み出す拡散的創造

積彩の特徴は、造形技術だけでなく、デザイン生成の段階からアルゴリズムを活用する点にある。今回は独自のコンピューテーショナルデザイン手法を用い、ノイズパターンを掛け合わせた500パターンの形状を自動生成。その中からコンセプトに適したものを抽出し、さらに500パターンを追加生成するという反復的な探索を行った。

出典:積彩、BAKE CHEESE TART
出典:積彩、BAKE CHEESE TART

このプロセスは「収束」ではなく「拡散」から始まるアプローチであり、クライアントとともに形を見出していく共創のプロセスそのものが価値を生み出している。最終的に完成した什器は、造形の多様性とコンセプトの一貫性を両立させた成果である。

4店舗それぞれに異なる造形、統一する世界観

今回制作された4つの什器はすべて異なるデザインを持つ。しかし、それぞれが同一の生成ルールに基づき、「メタモルフォーゼ」の概念を軸に展開されているため、店舗ごとに個性を放ちながらも、ブランドとしての統一感を保っている。異なる形状が「似た空気感」を共有することで、ブランドが持つ変化と連続性の両立を実現している点が特筆に値する。

出典:積彩、BAKE CHEESE TART
出典:積彩、BAKE CHEESE TART

積彩が拓く新しい空間デザインのかたち

積彩は、デザイナーや建築家と競合するのではなく、共に創り上げるパートナーとして位置づけられる。コンセプトをアルゴリズムに翻訳し、唯一無二の造形として空間に実装することを得意としている。

同社の空間装飾プロジェクトは次のようなステップで進行する。

  1. ヒアリング・コンセプト共有
    ブランドの世界観と必要な什器の方向性を定義。
  2. デザイン提案(パターン生成)
    独自アルゴリズムによって多数の造形パターンを生成し、顧客とともに方向性を選定。
  3. プロトタイプ制作
    3Dプリントによる試作を通して素材や形状を検証し、実装可能な設計を確認。
  4. 本制作・設置
    最終造形を実施し、現地での施工までサポート。
出典:積彩、BAKE CHEESE TART
出典:積彩、BAKE CHEESE TART

積彩は今後も、ブランドの世界観を空間として表現するために、3Dプリンティングとコンピューテーショナルデザインの可能性を拡張していく構えである。


3Dプリントで感性を形にする、積彩が示す空間デザインの新たな可能性

積彩の取り組みは、3Dプリンティングを「ものをつくる道具」から「空間を形づくる思考の手段」へと拡張している点に注目すべきである。
アルゴリズムを用いた造形生成は、偶然性と必然性のあいだでデザインを進化させる手法であり、デジタルだからこそ生まれる“新しい手触り”を感じさせる。

「メタモルフォーゼ」というテーマをチーズの質感や動きに重ねた今回の試みは、3Dプリントが持つ造形自由度を、感性表現の領域にまで踏み込ませた好例といえる。
デザインとテクノロジーの融合が進むなか、積彩のようなアプローチは今後の店舗づくりやブランド体験の在り方に、静かだが確かな変化をもたらしていくだろう。

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