「アスペクト・三菱商事テクノス共同セミナーin 東京」参加報告

2025年5月28日
セミナー会場の様子 記者撮影

2025年5月16日(金)に「アスペクト・三菱商事テクノス 共同セミナー in 東京」が株式会社アスペクトと、同社販売代理店である三菱商事テクノス株式会社により共同開催され、パネルディスカッションのファシリテーターとして、ShareLabから丸岡が参加した。今回のセミナーでは、設計、材料開発、ビジネスについて、これまで以上に幅広い話題の講演と、「ユーザーとメーカー間のギャップを可視化する」という題で、日本でのAM導入活用の現状と課題を知ることに、大変役立つ良い機会であった。そのためか、近隣、遠方からの多くの参加者で会場は満席となり、会場にて活発に交流する様子も見られた。その内容の要点をお伝えする。(上記写真は記者撮影)

株式会社アスペクトと三菱商事テクノス株式会社 概要

株式会社アスペクト(本社東京)は1996年設立。樹脂粉末レーザーPBF装置開発・販売・保守、粉末樹脂材料開発・販売、AM装置を用いた受託造形サービス、AM技術の用途開発や共同研究開発を行う企業で、国内外に多くの装置ユーザーを有する。現在販売する樹脂粉末レーザーPBF装置製品シリーズはAM-E3(エーエムイーキュービック)で、ワークサイズや高温材料対応により4グレードで販売されている。

三菱商事テクノス株式会社(本社東京)は、金属加工機械を中心とした工場内各種設備機械/装置の単体及びシステム等を行う商社。AM関連はアスペクト樹脂AM装置、及びColibrium Additive社(旧GE Additive)の金属AM装置(金属3Dプリンター)販売のみでなく、AM関連装置・測定機器・開発商品販売、受託成形も行っている。

「アスペクト・三菱商事テクノス 共同セミナー in 東京」講演の要点

まず今回の機会を与えていただいたアスペクト、三菱商事テクノスの皆様と講演、参加をされ、貴重なお話を伺った皆様にこの場を借りて感謝の意をお伝えしたい。主な講演と要点を以下にお伝えする。

基調講演『DfAMの実現に向けた取組みと実用化の課題』
三菱重工業株式会社
技術戦略推進室技術企画部企画グループ
主席部員 博士(工学) 笠見 明子 氏

AMを取り巻く環境と同社の取り組みやAMによる製品価値の向上、AM市場における主要産業と同社の取り組みについて紹介。同社で実用化している金属AMはPBF、LMD、WAAMで、大型ガスタービンにおいて部品製造出荷実績は100,000点に及ぶ。AMの製品実用化に向けた課題として、製造技術に関する個別の課題解決に加え、データもない知見もない、設計ツールもないことを挙げたが、現在は大幅に改善。金属粉末材料の入手性や選択肢の狭さもかなり改善した。またプロセスや装置のロバスト性、ユーザー利便性も改善してきている一方で仕上げ、検査が課題としてクローズアップされている。海外では後処理を含めた評価を行っている。実用化の課題として、設計・製造・保証において従来は材料メーカーが保証することを、設計・原材料・造形・検査のすべてがユーザーの責任範囲となることを挙げた。またAMとDfAMのニーズは、地産地消、補用品、修理にあり、解決手段として迅速な設計、製造、品質安定化が考えられ、適用技術としてリバースエンジニアリングや製造使用現地での品質管理技術があるとした。実用の要点として、装置保証の点でロバストな装置を選ぶこと、プロセス保証の点でプロセスや材料の共通化、材料保証の点で性能データベースの構築などを示した。海外ではデータベースを共通共有化している。品質保証については産業、企業でも定義が違い、粉末製造法による品質の違いもある。造形中積層表面検査において、フリンジプロジェクションはインプロセスで造形不良を検出可能で、品質保証に有効。異常を検知することで、ポストプロセス検査の負荷を低減できるとのこと。 

次の基調講演として「群栄化学工業におけるAMを活用した材料開発動向」と題し、群栄化学工業株式会社 開発本部商品技術部 飯塚 一毅 氏より、PBF用のプラスチック系、セラミックス系、炭素系3種、BJT用の鋳造砂型用粉末の開発材料の紹介があった。特にプラスチック系PBF材「CB50」は、フェノール樹脂を炭化して作る真球状カーボンとナイロン樹脂の混合粉末材料で、硬い、高耐熱、低収縮率の特長があり、既に大手自動車メーカーが、部品の検査用固定治具の部品として採用、水平展開しており、従来部品ごとに樹脂ブロック切削で作っていたコストを低減しているとの紹介もあった。

最後の基調講演として、「検討から前提へ、求められる「AM的社会」への適応」と題し、株式会社YOKOITO 代表取締役 中島 佑太郎 氏より、ビジネス視点から、日本の現状をPEST分析(政治的、社会的、経済的、技術的に分析する手法)で示し、政治による突然転換、コロナ禍という不可抗力による突然の分断、国際協調社会から地政学的分断などが起き、サプライチェーンが突然断絶されたら?なぜ日本企業は、新たなテクノロジーに業務フローを適用させるのではなく、テクノロジーをフローに合わせようとするのか?の問いに対し、今後生産数向上が見込めないなら、付加価値向上を目指すしかなく、新規性、限定性、カスタム性を実現するAMを前提に検討すべきとの提言を示した。

パネルディスカッションの概要

下記のテーマとパネリストにより、パネルディスカッションが行われた。ファシリテーターはShareLabの丸岡が担当して進められた。

テーマ:ユーザーとメーカー間のギャップを可視化する
パネラー(五十音順、敬称略):
アルケマ株式会社 黄 瞳
一般社団法人日本3Dプリンティング産業技術協会 三森 幸治
宇宙航空研究開発機構 境野 正法 
群栄化学工業株式会社 飯塚 一毅
ダイキン工業株式会社 小森 洋和
株式会社デンソー 寺 亮之介
東レ株式会社 中村 友彦
ポリプラ・エボニック株式会社 水谷 敏男
三菱重工業株式会社 笠見 明子
株式会社安田製作所 安田 龍生
株式会社YOKOITO 中島 佑太郎
三菱商事テクノス株式会社 檜枝 貴史
株式会社アスペクト 須甲 信一

パネルディスカッションの様子 (アスペクト撮影提供)
パネルディスカッションの様子(アスペクト撮影提供 左端 ファシリテーター 丸岡)

まずファシリテーターから、ユーザーとメーカーとのギャップの多くはQCD(品質、コスト、時間)に分類でき、その中で最大のギャップは「C=コスト」であるとした上で、下記の論点を示した。

  • ユーザにとっての「AMのコスト」とは?
  • コストには何が含まれ、AM導入活用の判断基準は?
  • メーカーにとっての「コスト」と「価格」とは?
  • メーカーが考えるユーザーとのギャップは?

それに対し、ユーザー側からは、現状のコストは量産自動車部品には10‐100倍のレベルで高い、航空宇宙関連ではトータルプロセスでコストを見ている、製造以外に品質検査管理のコストも高いなどに加え、導入したが求める形状寸法が容易にできず、利益が出ないという実状も示された。メーカー側のパネリストからは、粉末材料の製造コストは世界的に上がっており、今後も努力はするが、コストが下がる見通しは難しい、プリンターは製造装置として、センサーやAI活用含めた造形品質改善を進めてはいるが、まだ特定材料でのユーザー検証を始めている段階など、ユーザーの要望との格差は、現状また当面も大きいという現実が見えた。

一方、基調講演での自動車メーカー検査治具の例では、メーカーが売り込んだり安価で販売したのではなく、ユーザーが現状コストの問題認識から解決策を求めた結果、AMによるコストダウンが実現したことが示され、現状でもコストが見合う未発掘の領域もあること、また今後設計解析、センサー、データ分析、AIなど装置や材料以外の技術により、プロセス全体でコストを下げる動きも見られることから、まずユーザーとメーカーが課題を共有し、協働することがギャップを埋める方法のひとつであることをファシリテーターから示してディスカッションを終えた。

まとめ

過去に開催された「アスペクトセミナーin東京」や、「アスペクト・三菱商事テクノス 共同セミナー in 名古屋」もShareLabで参加報告をお伝えしたが、今回は参加者も100名近くまで増え、このような会場対面、交流のイベントに対するニーズは高まっていること、また今回もユーザー、非ユーザーがほぼ半々とのことで、このような場が増えることは、メーカーとユーザー双方にとって有意義であることも再認識した。特に今回の講演とパネルディスカッションでは、以前と比べてもAMを製造に使う実例や需要が増えたからこそ課題の種類や質も変わり、それらはユーザー、メーカーのどちらか、AM装置や材料、ソフトウェアだけ、また1社だけで容易に解決しない認識が広がっていることも感じられ、要求と現実のギャップはまだ大きいものの、様々な技術の並行進展により、改善されつつあることも見えた、大変良い機会であった。ぜひ今後もこのようなイベントに参加し、対話と交流をしていただくことを強くお勧めする。

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設計者からAMソフトウエア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、AMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしていきます。

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