「Materialiseカンファレンス2024」参加報告 AM製品製造と品質管理 国内外の現状と課題、その解決策は?
2024年6月12日(水)にマテリアライズジャパンが東京 駐日ベルギー王国大使館で開催した「Materialiseカンファレンス2024」にシェアラボから丸岡が参加した。まずこの機会を与えていただいたマテリアライズ本社、マテリアライズジャパンの皆様と講演に参加をされ、貴重なお話を伺った皆様にこの場を借りて感謝の意をお伝えしたい。本件は招待者限定参加イベントで詳細内容は非公開のイベントであったが、マテリアライズジャパンにご承諾をいただき、AMに関わる方々に参考になる要点に限りお伝えする。またシェアラボ編集部では本イベントに合わせて来日したマテリアライズの創業者ヴァンクラーン会長に単独インタヴューを敢行。その様子も是非ご覧いただきたい。
マテリアライズ社概要
1990年にウィルフリード・ヴァンクラーン氏が妻とともに「より健康な社会を創造する」を使命とし、Materialise NV社をベルギーで創立。3Dプリントサービス事業は世界的にも最大規模になった今も成長を続け、加えて自社3Dプリント事業の効率、品質、コスト改善に必要なソフトウェアを開発、使用実証改良し、それらを販売するソフトウェア事業を立ち上げ、AM用データおよび造形準備ソフトウェア「Magics」をはじめとする多種製品を世界中で販売。現在21か国に31の拠点を持ち、社員数約2,400名の企業に成長している。日本ではマテリアライズジャパン株式会社がソフトウェアの販売、サポートを行っている。
「Materialiseカンファレンス2024」講演の要点
当日は国内のAMを既に使われている企業、またAM装置・材料製造企業から約30名の方が参加された。会場内にはマテリアライズのソフトウェア製品である「Materialise e-Stage for Metal」で最適自動設計されたサポートをソディック 金属レーザーPBFプリンターで造形したサンプルや、AM生産のあらゆる工程を計画、管理、最適化のためのソフトウェアプラットフォーム製品「Materialise CO-AM 」。またAMプロセスデータ収集、監視、分析のためのソフトウェア製品「QPC(Quality Process Control)」とそれによるテストピースを造形したサンプルの展示紹介があった。
講演プログラム
【講演1】Materialise NV 会長 ウィルフリード ヴァンクラーン 氏
「AMの最終製品の用途活用と品質保証」
【講演2】三菱重工株式会社 エナジードメイン GTCC事業 事業部長代理 片岡 正人 氏
「三菱重工におけるガスタービンへのAM適用の取り組み」
【講演3】テュフズードジャパン株式会社 CAM事業部 サステナブル技術 マーケティング担当 畝 竜哉 氏
「AM製造サイトの品質保証システム規格と第三者認証」
【講演4】Materialise NV Product Managerヤン バン エスペン 氏
「Materialiseにおける新製品開発プロセスと品質保証のソフトウエア基盤」
講演全体の概要
講演に共通のテーマは、ヴァンクラーン 氏が講演冒頭で示された問いである「AMは大量生産技術になり得るか?」に対する答えは、国内外で今現実に起きている事実から「なり得る」であり、一方そのための課題は「なぜ?なんのために?」から「どのように?」に移っているということであったと理解した。
実例として半導体露光装置で圧倒的な世界市場シェアを持つオランダの企業は、Materialiseを含むAM製造企業によるサプライチェーンを構築し、多種多数の実用部品を製造していたり、中国の企業では折り畳みスマートフォンヒンジを小型化する設計と多数台の金属AM製造企業により年間数十万個製造をしている例が示された。
日本を含むAMが生産に活用されていない地域では、標準化規格、コスト、人材不足、AM品質管理の困難さなどが課題となっているが、現状普及の下地となる技術、ツール、人材は整いつつあり、品質管理規格によるプロセス認証も取得出来る。また、製造条件開発や性能品質検証と管理も多種多量のデータを簡単に収集、統合、分析できるソフトウェアを使うことで従来より難度や要する期間と工数を減らすことができる。
課題解決のヒントとして、標準一般化されてからではイノベーションによる競争力につながらないという観点による製品開発、付加価値の高まる用途選定と設計、データとソフトウェアによるプロセス管理が重要であること、規格や政府行政を動かすには、関係者間の協力協働がカギになることなどが示された。
参加を終えて
講師や参加者から個別にお話しを伺うことができたが、AMの使い方はそれぞれ異なる一方、企業社内で装置や材料の調査研究に取り組まれている一方、活用用途が先にあっての研究というより、研究してから用途を探す、その用途選定や社内認知普及に苦労されている声が多かった。AMは素形材と形状を同時に作り、管理しなければならない難しさから、各社がAM装置を導入し、自前で調査研究に長い時間と工数をかけてしまい、なかなか製造に進む実証検証に進めない、また壁を越えられない傾向をイベント参加を通して感じた。それを打破していくには用途や利益から遡って研究調査すること、国内外問わず既にある情報、知識、ツールを知って利用できるものは利用すること、社内外の多くの関係者と協働することなどは多くの企業に共通する解決策ではないかと改めて考えさせられたイベントでもあった。
シェアラボ編集部では、今回のイベントに合わせて来日したマテリアライズ創業者のヴァンクラーン会長に独占インタヴューを敢行。欧州のAM活用をけん引するマテリアライズの創業会長が語る中韓のAM活用に対する温度差、日本の現状に対する厳しい指摘と処方箋をまとめた。
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設計者からAMソフトウエア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、AMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしていきます。