ストラタシス本社CEO来日~AM上場企業で唯一利益を出す健全経営をアピール

2025年6月17日
Stratasys CEO ヨアブ・ザイーフ氏 記者撮影

2025年6月13日、株式会社ストラタシス・ジャパンは、同社ショウルーム(東京)にて、来日したStratasys本社 CEO ヨアブ ザイーフ(Yoav Zeif)氏による講演を主としたイベント「メディアラウンドテーブル」を、国内主要メディア数社から記者を招待して開催した。シェアラボからは丸岡が参加した。(上部画像は「メディアラウンドテーブル」で講演するザイーフ氏 シェアラボ記者撮影)

ストラタシス社概要

ストラタシス社(Stratasys Ltd.)は1989年にアメリカで「FDM方式」と称されるMEX(材料押出法)3Dプリンターの発明者であるスコット クランプ 氏により創業され、2012年のMJT(材料噴射法)3DプリンターメーカーObjet社との合併などを経て、現在AM基本工法5種の樹脂3Dプリンターおよび材料の世界最大規模のメーカーで、日本でも多様な産業と用途で多くのユーザーが製品を活用している。

ストラタシスCEO講演の要点

「アディティブ・マニュファクチャリング(AM):柔軟な地域密着型サプライチェーンによるグローバル生産の再定義」
Stratasys本社 CEO ヨアブ ザイーフ 氏

始めにザイーフ氏から英語と日本語スライドによる講演(株式会社ストラタシス・ジャパン 代表取締役社長 シャルマ スニール氏 逐次通訳)があった。講演の要点は以下の通り。

株式会社ストラタシス・ジャパン 代表取締役社長 シャルマ スニール氏 記者撮影
株式会社ストラタシス・ジャパン 代表取締役社長 シャルマ スニール氏 記者撮影

ストラタシスの現状

Stratasysの現状として、定価2万ドル以上の樹脂3Dプリンター世界市場で、約25%のシェアを持つNo.1企業であり、同種の株式公開企業で唯一利益を出し、健全経営を続けている。また、複雑な要素が絡む顧客の成功に焦点を絞っており、正しいニーズに合ったソリューションを、優れたアプリケーションエンジニアを通して提供している。同社はAMの5つの基本工法の28機種によるハードウェアプラットフォーム、ソフトウェアプラットフォーム、ForwardAM買収で180種となる業界最多の材料プラットフォームを有し、製品を売るのではなく需要に合わせた提案が可能で、それが強みである。また世界的な航空機や自動車メーカーを含む14社の経営幹部による、「カスタマーアドバイザリーボード(諮問委員会)」により、AMの将来を考察している。

世界のAM業界の現状

次に、世界のAM業界について、株式上場企業の時価総額=認識された価値には年度ごとに大きなアップダウンがあるが、 累積AM製品売り上げ=実際の値は伸び続けている。

また市場投入までの時間と研究開発スピード向上を含む、AMの特性を活かした価値が生まれており、日本の顧客からもイノベーションの可能性を感じている。例えば北米自動車メーカーは、試作から製造治具、実用部品製造もAMを活用し、新車開発期間を3年から1年にしている。

他にもAMがもたらす価値には「サプライチェーンをより安定、リスク分散」「少量生産の効率性向上」「革新的かつ複雑なデザイン形状」「持続可能性」「高いカスタマイズ性」がある。

一方、AMはプロトタイピング世界市場約160億ドルの約40%を占めたが、製造全体の$17兆ドルのに対しては約0.05%しか占めていない。

ストラタシスは「用途特化ー高付加価値化」をめざす

世界の3Dプリンターメーカー各社は、これまで「汎用-特化」の市場を縦軸、「コスト-付加価値」の優位性を横軸とした直交表(下写真スライド右側の図)の中央付近に集中し、プリンター製品自体の性能で優劣を競ってきた。今後メーカーが実行すべきは「用途特化-高付加価値(表右上)」を目指す選択肢1と「汎用-低コスト(表左下)」を目指す選択肢2となり、Stratasysが目指すのは、選択肢1の、顧客ごとの課題や用途にカスタマイズした解決策を提供することである。

続いて株式会社ストラタシス・ジャパン 代表取締役社長 シャルマ スニール氏より、バリューチェーン全体に対応する幅広いStratasys製品群、FDMプリンター最新製品 F3300やPolyJet材料新製品 ToughONE の概要紹介、また治工具用途が普及しない理由として「CAD設計者の不足」を挙げ、解決策として、ソフトウェア製品 GrabCADPrintProに新搭載した、固定治具の設計が簡単にできるfixturemateの紹介があった。

トランプ関税の影響は?

講演後の質疑応答では、シェアラボ丸岡からの質問、「アメリカ トランプ政権の関税政策はStratasysにとってどのような影響があるか」に対し、ザイーフ氏は「全世界すべての業界やサプライチェーンに影響がある。Stratasysは生産拠点はイスラエルとアメリカ ミネソタ州にあることから、影響は限定的である。一方、良い影響例としてドイツの電車メーカーから、顧客の近くで製造するためアメリカで部品を作ってほしい、また世界から部品を輸入するアメリカのドローンメーカーから、AM製造力増強して北米だけで製造したいという相談を受けている」との回答があった。その他にも同社のサステナビリティ対策への質問に対し、3Dプリンターメーカーで唯一「ESGおよびサステナビリティレポート」を公表していること、EcoVadisから持続可能性「シルバー評価」を昨年受け、「ゴールド」を目指すことなどを回答した。

参加を終えて

Stratasys社は樹脂AM市場の先駆者かつ先導者であることは変わらないものの、近年の国際政治経済やAMユーザー需要の変化、市場内競争激化や企業再編など、難題に直面していることも事実である中で、ザイーフ氏のように、経営トップ自ら世界各国を回り、顧客訪問含め関係者と直接対話し、自ら経営状況や目指す方向性を直接語ることは、自社のみならず、ユーザーにとっても必要不可欠であり、日本のAM産業発展にも寄与するであろう。同時に、ザイーフ氏が述べたとおり、ユーザーの課題や要望はますます複雑化、細分化しており、特に日本のユーザー特有の課題についても、ユーザーとの対話を深め、それぞれに柔軟かつ最適な解決策を同社が提供していくことを期待したい。

ストラタシス社の関連記事

今回の取材に関連するものとして、これまでShareLab NEWSが発表してきた記事の中から3つピックアップして紹介する。ぜひあわせてご覧いただきたい。

設計者からAMソフトウエア・装置販売ビジネスに20年以上携わった経験と人脈を基に、AMに関わるみなさんに役立つ情報とつながりをお届けしていきます。

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