プロが明かす展示会出展で10倍成果が伸びるたった2つの極意と5つのお手本 ― TCT Japan
オンラインでの情報発信は重要度を増しているが、やはりリアルな展示会での新規顧客との出会い、既存顧客との交流は無視できない。部品や製品というリアルなモノを作り出す業界だからこそ、カタログスペックでは推し量れない「実際のところ」を、サンプルを触って技術者の話を聞いて判断するメリットは大きい。3Dプリンターを活用したモノづくりに関するすそ野が広がってきているからこそ、情報発信の取り組み方が問われているともいえる。
今回は日本を代表する3DプリンティングとAM技術の総合展示会TCT Japanを主催する株式会社 JTB コミュニケーションデザインの花岡 祐子 氏に、展示会でどのようなブースを出して情報発信することが重要なのか、具体的なお手本や失敗しないために心がけるポイントはなにか、何を準備しなくてはいけないのだろうかを聞いた。(写真:株式会社JTBコミュニケーションデザイン 事業共創部 トレードショー事業局 花岡 祐子 氏)
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展示会出展には2つの極意がある
シェアラボ編集部:3Dプリンティング界隈でビジネスを行っている会社さんは、装置メーカー、材料メーカー、設計支援、造形受託とさまざまな分野で事業を展開していると思います。特にサービスビューローとして受託造形を行う企業さんの数は目に見えて増加してきました。
ですが、取材をしていると、非常に高い技術や特徴的なソリューションを持っている企業さんなのに、展示会ブースでは魅力が伝わってこない場合も少なくありません。花岡さんはお仕事柄たくさんの展示会ブースをご覧になっていると思いますが、「こうしないともったい」「どうせ出展するならこうしてほしい」と感じることもあると思います。そんな方に向けて、成功のための極意のようなものがあれば、ぜひ教えてください。
花岡氏:極意というほど大げさなものではありませんが、大切なポイントが2つあると思います。
1点目は来場者が抱えている「課題」に対し「どのような手段でソリューションを提案できるか」を明確にしアピールすることです。TCT Japanには「軽量化を実現したい」「より効率的に生産したい」などのさまざまな課題解決に向けたヒントを求めて多種多様な業界の研究開発、製造技術担当者が来場されます。
一般的に、来場者が通路を歩きながらブースから情報を得る時間は1秒未満と言われています。その限られた時間で数ある出展者の中からどうやって一目で来場者からの関心を惹くかがポイントです。そのため事前に自社の製品・技術は「どういった手段でソリューションを提案できるか」を決め、ブースで表現することが重要になってきます。来場者の視線は、遠くからは高い位置に、近づいて通路からは社名版や壁面のポスターの辺りへ移ると言われています。ブースの高い位置には多くの人が関心を引くキャッチコピーを大きく掲げ、壁面ポスター等にはより具体的なソリューションを簡潔に見せるというストーリーが重要になってきます。
シェアラボ編集部:すごく見せ方に関して体系だったノウハウがあるんですね!
花岡氏:そうなんです。そのために、来場者の目線に立って「誰の」「どんな課題感」を「どう解決するか」を決め、「どんなメッセージなら伝わるか」を考えていくと整理ができると思います。
大事なポイント2点目は、特にAM業界では具体的な事例の展示が求められています。これは来場者も出展者も共通して言えることなのですが、海外に比べてAMを活用した実製品化に触れる機会が限定的な日本においては、「事例展示」が一番関心度が高いトピックスです。
展示会は多くの来場者が訪れるので、新規の見込み客との出会いの場でもあるのですが、実例展示のような必要とされている情報を展示することで、既存の見込み客の掘り起こしもできます。実際に情報開示の準備も含めて事前のPR準備を徹底された出展者は出展の成果をより実感されているようです。
年間数百の展示ブースを見る展示会主催者が5つのお手本を紹介
シェアラボ編集部:製品やサービスの企画、営業、納品まで少数精鋭で進めている企業も多いので、「成功する展示会出展のための極意がある」というお話は、どんな展示会ブースにしていったらよいか迷っている担当者には心強いと思います。
課題感への解決の提示、具体的なソリューションの見える化はぜひ意識していきたいところですが、これを目にした担当者の方が、社内の他の誰かと共有するためにも、自分の会社のブースを企画していく際には、上手に取り組んでいるお手本に関しても知りたいところです。こんな上手な例がありますよ、というベストプラクティスをいくつかご紹介いただけませんか?
花岡氏:はい。今回は特別に前回開催されたTCT Japan 2023で主催者の私たちも素敵な見せ方だなと感じた出展ブースをいくつかご紹介したいと思います。
まず初めにご紹介するのは金属技研さんのブースです。来場者・出展者がともに最も知りたい情報である実製品展示を軸にブースを構成されています。ブース装飾の一番高い位置に遠くの来場者にも興味を抱かせる文章を打ち出し、ブース内には実際に製品を展示をするという構成が大変良いと思いました。
シェアラボ編集部:金属技研さんはカシオさんのG-shockの40周年モデルを展示されていましたよね。人が多くて私たちも取材するために順番待ちしました。
花岡氏:大変盛況でしたね。展示に向けてメーカー様との調整にご苦労されながらも実製品の展示を可能にしたことで大きな反響を得られたよい実例かと思います。
次が「エス.ラボ」さんです。ペレット式の3Dプリンターで造形した実物サンプルを展示されています。このサンプル展示が来場者からのコミュニケーションのきっかけになっていたことに加えて造形物の完成形が見せられるという点で構成面で良く工夫されたブースだと感じました。
シェアラボ編集部:そういう観点で見ると、右手に実機(3Dプリンター)があり、左手に説明パネルがあって、ブース内で一連の商談のやり取りに必要な情報・コンテンツが詰め込まれているんですね。
花岡氏:そうなんです。目線で大きく目立つ造形物を展示することで、最初のコミュニケーションをとるのに良い構成をとれば、来場者を呼び込めますし、実商談に近いやり取りもできると思います。
その次にご紹介するのが、「ひょうごメタルベルトコンソーシアム」さんのブースです。支援団体と複数のAM関連企業が共同で出展されていました。多彩な共同出展者の顔ぶれで、材料、設計、造形、試験までの一連のAM製品製造の説明が網羅できるブースで大変好評でした。
シェアラボ編集部:出展者さん同士も仲がよさそうでしたよね。
花岡氏:そうですね(笑) 会期の終わりのほうになると、「隣の企業の説明が代わりにできる」と皆さま仰っていて、横の繋がりも重要なAM業界ならではの良さだなと思いました。
最後にご紹介するのが、ShareLab.さんのブースです。大きなタペストリー、テーブルの腰巻などを再利用できる素材を上手に配置されていて、コストを一定に抑えながらブランディングをされていましたね。この構成であれば、1小間サイズであればどんな展示会にも出展できるようになっている点が完成度が高かったと思います。
シェアラボ編集部:ベストプラクティスに上げていただき、大変恐縮です(笑)再利用できる装飾備品は保管スペースもコストも抑えられるうえに、展示会らしい雰囲気づくりには活用できたかもしれません。私たちの場合は経験者がいたので手配もスムーズでしたが、もし初めて展示会の出展担当者になったら、何から始めたらいいのでしょうか?
花岡氏:まずは展示会出展の目的を明確にしていくことから始めてください。自社の製品やサービスの特徴は沢山思いつくと思います。ですが、すべて伝えようとすると言いたいことが多くなりすぎて何をPRすればよいのか迷われるかもしれません。ですからまず、今回の出展目的を新規獲得/新製品の紹介/既存顧客の掘り起こし、など整理して頂くのが良いと思います。そうすることで、展示ブースで来場者に最も伝えたいメッセージが見えてくるかと思います。その上で、「新商品開発」「事例紹介」等の注目度の高いフレーズはブースの高いところで大きく掲示し、ポスター等にはより具体的なソリューションを簡潔に書くという先程の展示ブースのストーリーに当てはめていくといいかと思います。
シェアラボ編集部:いろいろな展示会を取材をしていると、暇そうにパソコンを眺めているブースもたまに見かけます。そういうブースは確かに誰のためのどんな解決方法を提示しているか、ブースを遠くからみても伝わってこないです。知らない社名と近くに寄らないと見えないパネルや展示物しか用意していないと、近くに寄って話をしようという気にならないかもしれないですね。
花岡氏:弊社は年間20件以上の展示会を主催しております。 そういったノウハウを詰め込んだホワイトペーパーもご用意しております。
またTCT Japanでは今回初めての展示会出展を検討されている方に向けて、トライアルブースもご用意しました。初期費用を抑えて出展できるようにご用意した特別メニューです。すでに予定小間数の半数以上が埋まっています。隣のブースとの仕切りや電気工事の手配、机といった手配が必要なものが初めからセットされているので、展示会で何をどう伝えようかという点に集中できるようにご用意しています。
シェアラボ編集部:トライアルブースは参加費用も抑えられるうえに、準備の手間が少なくてよいですね。ただ、展示会準備で忙しくしていると、デザインや文言で何が正解かわからなくなってしまう場合もあります。よく作るものでもないので、迷ってしまいますよね。
花岡氏:考える中で迷われることもあるかと思いますが、出展準備の前にまず前提となる「出展目的」を明確にしていれば、ブース装飾や事前PR施策など出展までの1~10の準備は外部のブレーンとして私たち主催者にいつでもご相談ください。
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何事もやってみなくてはわからない。やる中で自社にとってのベストな取り組み方法が見えてくる。とはいっても、取り組むこと自体が結構な手間なのがWebサイト制作だったり、展示会出展だったりする。モチは餅屋に任せたいが、予算の制約もある。そんな時は初心者向けのパッケージの活用が有効かもしれない。
毎年数百の展示会ブースを見てきた日本有数のプロがまとめた無償のホワイトペーパーや花岡氏のようなスペシャリストに相談できるのは大変有益だろう。自社の事業や打ち出したいサービスや製品を口に出して説明するとそれだけでも頭が整理されるだろうし、展示会ブースの装飾にこうやって落としこんでいく、というアドバイスは業者や社内の関係者にどう協力依頼したらいいをつかむことができるだろう。(提供:TCT Japan)
TCT Japanに関するお問い合わせ先
TCT Japan事務局 株式会社JTBコミュニケーションデザイン 事業共創部 トレードショー事業局内
〒105-8335 東京都港区芝3-23-1セレスティン芝三井ビルディング
〒541-0056 大阪市中央区久太郎町2-1-25 JTBビル 8階
TEL : 03-5657-0765 FAX:03-5657-0645
E-Mail:tctjapan@jtbcom.co.jp
公式HP:https://www.tctjapan.jp/index.html
2019年のシェアラボニュース創刊以来、国内AM関係者200名以上にインタビューを実施。3Dプリンティング技術と共に日本の製造業が変わる瞬間をお伝えしていきます。