スペイン・カタルーニャ州のCatalonia Institute for Energy Research(IREC)は、セラミック3Dプリンティングを活用して水素関連デバイスを製造するパイロットプラント「Merce Lab」を立ち上げた。固体酸化物セル(SOC)を対象に、積層造形と工業的組立を組み合わせた準工業規模での製造を行う点が特徴で、水素技術分野における製造プロセスの現実解を示す取り組みとして注目される。
目次
セラミック3DプリントでSOCを準工業規模へ
Merce Labの中核技術は、燃料電池および電解装置として動作可能な固体酸化物セル(SOC)である。SOCは高温動作により熱エネルギーを有効利用でき、ポリマー系技術と比べて高い変換効率が見込まれる。
製造プロセスは、セラミック材料をインク状に調整する工程から始まり、3Dプリンターによるセル造形、焼結(シンタリング)による高密度化・高強度化へと進む。その後、インターコネクト部品の製作、セルスタック化、最終的な性能検証が行われる。積層造形を用いることで、従来工法では難しかった内部構造や複雑形状の最適化が可能となる。

材料使用量削減と高エネルギー密度を両立
セラミック積層造形の導入により、材料使用量の削減と軽量・コンパクト化が同時に図られている点も重要である。エネルギー密度の向上は、海運、航空、大規模エネルギー貯蔵といった分野での応用可能性を広げる。
プロジェクト側の試算では、装置コストは約880ドル/kW(1ドル150円換算で約13万2,000円/kW、800ユーロ/kW相当)とされており、コバルトやニッケルなどの希少金属を用いない点も含め、製造コストと資源制約の両面から現実的な水素デバイス製造を目指している。
スピンオフ設立も視野に入れた産業展開
本取り組みは、欧州の重要プロジェクトであるIPCEI(Important Projects of Common European Interest)の枠組みのもと、H2B2を中心に支援を受けて進められている。将来的にはスピンオフ企業「Oxhyd Energy」の設立も計画されており、研究段階にとどまらず、実際の産業化を見据えた体制構築が進められている。
シェアラボ編集部コメント
水素社会の議論では「技術があるか」よりも「どう作るか」が壁とされる場面が増えている。IRECのMerce Labは、セラミック3Dプリンターを製造技術として正面から組み込み、SOCを準工業規模で扱おうとする点が現実的である。材料・形状・量産性を同時に設計できる積層造形は、水素デバイスの“研究止まり”を脱するための有力な選択肢になり得る。日本の製造業にとっても、エネルギー分野でのセラミックAM活用を再考する契機となる事例だ。
用語解説
| ■ 固体酸化物セル(SOC) 高温で動作するセラミック製の電気化学セル。燃料電池として発電にも、電解装置として水素製造にも利用できる。 |
| ■ セラミック3Dプリンティング(積層造形) セラミック材料をインクやスラリー状にして積層し、焼結によって高密度化する製造手法。複雑形状や内部構造の最適化に強みを持つ。 |
| ■ IPCEI 欧州連合が戦略分野で推進する「欧州共通利益に資する重要プロジェクト」。エネルギーや半導体などで国境を越えた産業支援を行う枠組み。 |
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