3D制作の現場では長年にわたり、「形状はジオメトリで作り、テクスチャは後から貼るもの」という分業的なワークフローが当たり前とされてきた。ゲームや映像用途では一定の合理性を持つ一方、3Dプリントや製造用途では、この前提そのものがボトルネックになる場面が増えている。テクスチャの伸びや継ぎ目、陰面の情報欠落、裏側の破綻。画面上では問題なく見えても、実際にプリントすると不具合が露呈し、修正作業に多くの工数を要するケースは珍しくない。こうした構造的な課題に対し、Hitem3Dは最新バージョン「Hitem3D 2.0」で、従来とは異なるアプローチを打ち出している。
目次
テクスチャは「貼るもの」ではなく「一体で生成するもの」
Hitem3D 2.0の最大の特徴は、1536³ Pro解像度での統合テクスチャ生成にある。テクスチャを後工程で付加するのではなく、形状・スケール・マテリアルの論理と連動させ、生成段階からオブジェクトの一部として扱う設計だ。
同社が重視するのは、ビジュアルの派手さではない。生成時点で構造とテクスチャの整合性を確立し、プリントや量産工程での再作業を減らすことにある。後処理に頼らない設計思想は、製造用途を意識したものと言える。
3Dプリント現場で効いてくる「裏側」の完成度
3Dプリントでは、モデルの裏面や内部構造が品質を左右する。座像フィギュアの背面、マントの内側、建築モデルの内部壁面などは、従来のマルチビュー投影型テクスチャでは情報が欠落しやすい領域だ。
Hitem3D 2.0では、ジオメトリ再構築の段階でテクスチャ情報を生成することで、可視部・非可視部を問わず一貫したディテールを保つことを狙っている。建築モデルの内部構造や手すり部分まで、同一のマテリアル論理で自然に補完されていたという事例も紹介されている。

PBRとライティングの不整合を避ける設計
AIによるテクスチャ生成で問題になりやすいのが、影やハイライトがベースカラーに焼き付いてしまう点だ。これにより、PBR環境下でマテリアルの挙動が破綻するケースが起こる。
Hitem3D 2.0では、光源影響を考慮したセマンティック認識と物理ベース精度を組み合わせ、影・スペキュラ成分を分離。ライティング条件に依存しない、扱いやすいマテリアルデータの生成を可能としている。

人物・髪の表現にも踏み込む
人物モデル、とりわけ髪の表現はAI 3D生成が苦手とする分野の一つだ。Hitem3D 2.0では、ストランドレベルの精度を目指したポートレートモードを搭載し、髪の流れや眉毛、まつげといった細部を保持したまま生成できる設計となっている。
従来見られた「ヘルメット状」の髪表現やジオメトリ同士の干渉が抑えられ、後工程での修正負担が軽減される点は、実務面での利点と言える。

製造を見据えたプロダクション機能
Hitem3D 2.0は、単なるジェネレーターではなく、製造工程までを見据えたツールとして設計されている。
意味的な3Dモデルセグメンテーション、自動リトポロジー、AIによる3Dエンボス加工、そしてマルチマテリアル・プリント向けの自動エクスポート機能を備える。最大4種のマテリアルに対応し、将来的には8〜16種への拡張も視野に入れている点は、フルカラープリントとは異なる実務志向の設計と言える。
USDZ形式への対応やBlenderアドオンにより、新規生成だけでなく既存モデルの再活用にも対応する。
シェアラボ編集部コメント
AIによる3D生成は、見栄えの良さが先行しがちだが、3Dプリントや製造の現場で問われるのは「そのまま使えるかどうか」である。Hitem3D 2.0は、派手な表現よりも構造整合性や再作業の少なさを重視した設計が印象的だ。AI 3D生成が“デモ用途”から“現場で回る技術”へ進む流れの中で、製造業の視点から注目すべき動きと言える。
用語解説
| ■ PBR(Physically Based Rendering) 物理法則に基づいてマテリアルの反射や質感を定義するレンダリング手法。光源条件が変わっても一貫した見た目を保てるため、製造・設計用途でも重要視される。 |
| ■ マルチマテリアル3Dプリント 複数種類の材料を1つの造形物内で使い分ける3Dプリント方式。色分けだけでなく、硬さや透明度など異なる特性を組み合わせた造形が可能。 |
| ■ リトポロジー 高密度なメッシュを、造形や製造工程で扱いやすい構造に再構築する工程。データ軽量化や形状安定性の確保に用いられる。 |
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