中国最大のロケットエンジンの部品製造に3Dプリンターを活用 ― Galactic Energy
中国の航空宇宙産業企業Galactic Energy社で、自社で開発中の再利用可能なロケットエンジンの主要部品のうち、30以上を3Dプリンターで製造していることが判明した。部品の製造は3Dプリンティング業界において多くの実績があるFalcontech社に委託され、同社がFarsoon社製のSLS方式の3Dプリンターを用いて製造している。(画像はイメージ/出典:pixabay)
フルシステムテストは成功、製造効率も向上
2022年3月の段階で、3Dプリント部品を組み込んだロケットエンジンのフルシステムテストは成功をおさめている。このテストで、エンジンの動作や構造設計、部品同士の連携に問題がないことが確認されている。テスト終了後もエンジンは無傷で、再利用可能な状態で残っていたとのこと。
Galactic Energy社はすでにこれまで6基の衛星の打ち上げに成功し、現在は2023年中に、最大50回まで再利用可能なロケット「Pallas-1」の打ち上げを目指している。開発中の3Dプリント部品を組み込んだロケットエンジンもPallas-1に搭載される予定だ。
25日間かかっていた期間が4日間に短縮
ロケットエンジンの部品製造に3Dプリンターを活用することで得られた大きなメリットは、高い生産効率だ。たとえば、Galactic Energy社がFalcontech社に外注した3Dプリント部品の1つであるスラストチャンバーは、従来であれば製造に約25日かかる。3Dプリンターを活用したことで、25日間かかっていた期間が4日間に短縮された。また、機械加工では20~25日かかるタービンディスクの製造も3Dプリントなら3~4日で完了する。
3Dプリントにより、製造サイクルが約80%も短縮されることで、ロケットエンジンの開発や改良への時間が大きく確保できる。
Galactic Energy社の特徴は「外注」
自社で3Dプリンターを導入して部品の内製化を行うケースが多い航空宇宙業界において、今回のGalactic Energy社の3Dプリント部品の外注は、大きな特徴であるといえる。
部品製造の外注は、自社で3Dプリントに対する研究開発をする必要がない点にメリットがある。今後は、自社で設計やプリントを行う企業と外注をする企業の二分化がすすむのかもしれない。航空宇宙業界において、どちらがよい結果をもたらすか、最終的な結論が近い将来には出るだろう。
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複雑な造形を金型なしに容易に行える3Dプリントは、航空宇宙業界での活用事例が多い。今回はロケットエンジンの部品の一部を3Dプリントした事例を紹介したが、ロケットエンジンそのものを3Dプリントしようする試みや、宇宙空間で3Dプリンターを用いて必要物資を現地生産しようとする試みも生まれている。
これらの事例については、過去にShareLabで取り上げているのであわせてご覧いただきたい。
国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。