ICONが世界最大級の3Dプリント住宅街建設を進める
さまざまな3Dプリント住宅を手掛ける ICON が、米テキサス州オースティンで世界最大級の3Dプリント住宅街の建設計画を推進中、来年着工予定だ。
テキサス州で進む建設計画
米テキサス州オースティンで、3Dプリントによる住宅街を建設する計画が進められている。
100棟を超える住宅を3Dプリンターで建設する計画は過去に例がなく、世界最大級の3Dプリント住宅街となる見通しだ。
この計画に携わるのは、住宅建設会社のレナ―と、デンマークの設計事務所ビャルケ・インゲルス・グループ、そして、3Dプリント建設を専門とする建設会社 ICON だ。
ICON社製 Vulcan
ICON社の 3Dプリンター 「Vulcan」や、その建造物については、当サイトでも何度か取り上げてきた。
通常の住宅だけでなく、3800平方フィート(約 167平方メートル)もの広さを持つ兵舎を建設した実績も持つ。「Lavacrete」という材料を自社で独自開発し、従来の住居より高い構造強度を実現した。
NASA が進める火星移住計画においては、Vulcan を利用し、現地の土から火星基地を 3Dプリントする計画が進行中だ。
詳しくは「北米最大の3Dプリント製軍事兵舎が誕生」、「NASAの火星移住計画には3Dプリンター住居が!独創的なその仕組みと設計に迫る」の記事を参照して頂きたい。
3Dプリント住宅の功利
今回の3Dプリント住宅建設では、1棟当たりの建設所要期間が1週間だという。3Dプリント住宅は建設期間が非常に短いことが特徴だ。設計から建設までのスピードも速い。
工期の短さはコストの安さにも直結する。人件費を抑えることで、これまでの住宅と同じクオリティでも、より安く提供することが可能だ。近年アメリカで問題となっているホームレス低所得者層の広がりを救済し、災害時には仮設住宅としても機能するだろう。
今回建築予定の3Dプリンター住居は価格を公開していないが、過去「3Dプリンター住居では24時間造形で完成する300万円の住居」や、オランダで3Dプリンター住居の賃貸スタートし、94平米・2LDKの平屋の家賃は、月800ユーロ(約10万円)など、3Dプリンターでの製造コスト削減から実現できる安さが魅力的だ。
効率的建築の恩恵を受けられるのは人間だけでない。工期の短縮によって、排出されるCO2の削減も可能だ。持続可能性や気候変動への対策としても 3Dプリント住宅は注目を集めている。
オースティンでの住宅街建設は、ICON が手掛ける過去最大級の計画となるが、こうした大規模な3Dプリント住宅建設計画は今後も広がりを見せていくことだろう。
ICON の CEO であるジェイソン・バラード氏は、今回の計画が「コミュニティー規模の開発案件の歴史で転換点となる」と語っている。「3DプリントはSFではない」とも。
将来には、3Dプリンターによって住宅価格が大きく下がり、マンションを移り住むような気軽さで新居を建設する時代が来るのかもしれない。
3Dプリンター住宅の関連記事
国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。