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Stratasys社とCollPlant社、商用サイズの再生乳房インプラントの前臨床試験を開始

CollPlant社のrhコラーゲンベースのバイオインク200ccを材料にストラタシスのOrigin®プリンタで造形された乳房インプラント。

Stratasys社とバイオテクノロジー企業のCollPlant社が、商用サイズの再生乳房インプラントの前臨床試験を開始した。この試験は、3Dプリンティング技術と生体適合性素材を組み合わせ、乳房再建手術における新しいアプローチを探るものであり、患者のQOL向上に向けた新たな可能性を切り開くことを目指している。(上部画像はCollPlant社のrhコラーゲンベースのバイオインク200ccを材料にストラタシスのOrigin®プリンタで造形された乳房インプラント。出典:Stratasys社)

まず、はじめに下記のリンクは2023年6月にお伝えした開発開始についての当時の記事である。今回の記事と併せてご覧いただきたい。

再生乳房インプラントの前臨床試験開始

Stratasys社とCollPlant社が共同で行う再生乳房インプラントの前臨床試験は、乳がん治療後の乳房再建における新しい治療オプションを提供することを目指している。従来のシリコン製インプラントは、体内で異物反応を引き起こすリスクや、定期的な交換が必要であるといった問題を抱えていた。これに対し、3Dプリント技術を活用した再生乳房インプラントは、患者の身体により適した形状と構造を提供することが可能であり、長期的な安全性と効果を追求している。主に注目されるのは下記の3つの点だ。

  • 200ccの容量を使って3Dプリンター造形された乳房インプラントの試験を開始
  • 30億ドルの市場機会に対応
  • 自然の乳房組織を成長させ、時間の経過とともに完全に分解するインプラントの能力に焦点を当てた研究

Origin®3Dプリンターを使用した商用サイズ200ccの再生インプラントを造形し、その前臨床試験を開始。この試験の目的は、CollPlantの乳房インプラント用生体造形技術の開発であり、同時にインプラントの製造工程を大規模化するためのソリューションを模索することである。研究の焦点は、自然の乳房組織の成長を時間とともに促進し、最終的に完全に分解するインプラントの性能を評価することである。

各社のコメント

「今回の前臨床試験は、従来のインプラントに代わり、再生医療を用いた治療を患者に提供する取り組みが大きく前進したことを意味します。CollPlant の取り組みは実に感動的であり、我々の協力関係は、ストラタシスがいかに顧客と提携してタイムラインとイノベーションの限界を押し広げるかを例証するものです。私たちは共に、現状に挑戦し、生活を改善し医療を進歩させる新しい方法を見つけるという共通の使命に突き動かされています」

と、Stratasys社のCEO Yoav Zeif 博士は話す。

それに対し、CollPlant社のYehiel Tal CEOは、次のようにコメントした。

「当社の乳房インプラント・プログラムの進展と、高解像度で最適な物理的特性を備えた商用サイズのインプラントを造形できるプリンタの開発に成功したStratasys社の功績を非常に喜ばしく思っています。両社の先駆的技術を組み合わせることで、開発・生産プロセスが効率化され、当社の再生乳房インプラントを最も効率的に生産できるようになると期待しています。私たちのrhコラーゲンベースの再生インプラントは、シリコン・インプラントや自家脂肪移植を使用する既存の乳房手術の課題を克服し、それによって患者の転帰を大幅に改善する可能性があると信じています。」

再生医療向け3Dプリンターで新たな進展

Stratasys社は樹脂3Dプリンター分野を牽引する企業であり、CollPlant社は再生医療と美容医療における先駆者であり、植物由来のコラーゲンを基盤とし、組織再生や臓器製造の革新的な技術や製品を開発している企業である。

両社は2023年4月に提携を発表し、以来Stratasys社はOrigin®3Dプリンターを再生インプラントの造形に適用し、CollPlant社は200ccの容量での3D造形に成功した。初期の研究結果は2025年前半に発表される見込みである。

現在、世界の乳房インプラント市場は約30億ドルと推定されており、乳房再建と豊胸術は世界で2番目に多く行われる形成外科手術である。現在主流の手術方法では、合成シリコン製のインプラントを使用し、天然の再生組織を人工的に代替するが、この方法には合併症のリスクも伴う。

今年初め、CollPlant社は進行中の前臨床試験において、インプラント内で血管を含む結合組織の発達(新生血管)が見られる良好なデータを取得したと発表した。さらに、インプラント内部で組織の新生が進行していることも確認され、組織再生の兆候が観察された。生分解プロセスの初期段階が認められつつも、3D乳房インプラントの構造は維持され、有害な組織反応は見られなかった。このことから、開発中のインプラントの安全性が裏付けられたと言える。

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今回のニュースに関連するものとして、これまでShareLab NEWSが発表してきた記事の中から3つピックアップして紹介する。ぜひあわせてご覧いただきたい。

国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。

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