3MFコンソーシアムは、3D製造フォーマット(3MF)が国際標準規格「ISO/IEC 25422:2025」として正式に認定されたことを発表した。AMのために設計されたXMLベースのデータフォーマットであり、従来のSTL形式などでは対応しきれなかった材料、色、テクスチャ、サポート構造などの情報を1つのファイルに統合して扱えるのが特長である。今回の標準化により、3MFはオープンソースのまま、安全性・互換性・拡張性を備えたグローバルな共通フォーマットとして、今後の製造業のデジタル化とAMの社会実装を加速させる中核的な役割を果たすと期待されている。(上部画像は3MFのプレスリリースより。出典:3MF)
目次
3MF標準化を支えた業界横断の10年にわたる取り組み
この成果は、同コンソーシアムのステアリング・コミッティによる10年近くに及ぶ継続的な取り組みの結晶である。同委員会には、主要なソフトウェアベンダー、ハードウェアメーカー、サービスビューロ、最終製品のOEMが参画し、フォーマットの精緻化、検証、将来性の確保を進めてきた。
国際標準化が裏付ける3MFの技術的信頼性とグローバルな地位
数多くの技術検討、公開草案の反復、業界横断的なパイロットプロジェクトを通じて、3MFはAMに必要なあらゆる重要情報を網羅できるように設計されてきた。今回のISO標準化は、その努力の正当性を国際的に認めさせるとともに、3MFが「安全かつ相互運用可能なAMデータ」のグローバル標準として地位を確立したことを意味する。
3MFとは
3MF(3D Manufacturing Format)は、AMのために設計されたXMLベースのデータフォーマットである。従来主流であったSTL形式の課題(素材情報の欠如、構造の曖昧さなど)を克服し、より豊富かつ正確な3Dモデル情報を提供できる。
具体的には、材料、色、テクスチャ、サポート構造などの情報を、拡張仕様を含めた1つのファイルに格納できる。このため、設計意図を高精度で物理モデルに反映させることが可能となり、エラーの低減や製造工程の効率化につながる。
製造業界へのインパクト
3MFのISO標準化は、AM業界における信頼性と相互運用性を飛躍的に向上させるものである。この標準化は、技術革新を促進し、導入障壁を低減させ、AMの本格的な普及を後押しする。
特に、厳格な規制が求められる分野において、3MFの価値は一層高まっている。政府機関や防衛関連企業は、構造が明確で文書化されたフォーマットでの納品をベンダーに要求しており、3MFは以下のような点でそのニーズを満たす。
- 材料仕様、製造パラメータ、セキュリティ分類、改訂履歴、暗号化機能などのメタデータをファイル内に埋め込める
- ITAR、DFARS、NATO STANAGといった規制にも対応可能
- デジタルスレッド全体を単一ファイルで一貫管理できる
また、医療機器分野では、ボクセル形式、スライス情報、サポート構造などの拡張によって、患者固有の形状や医師の承認済みビルド条件を厳密に固定できるため、ISO 13485や欧州MDRにおけるFDA申請の効率化が可能となる。
航空宇宙分野においても、3MFの幾何学的な忠実性と、材料ロット証明書からセンサーログに至るまでの資格情報を記録可能な特性は、AS9100やNADCAPなどの監査要求に応える点で評価されている。
加えて、3MFは主要なソフトウェア・ハードウェアベンダーにより継続的に保守されており、長期的な互換性とベンダーニュートラリティが保証されている。これにより、数十年後に部品の再製造や検査が必要になった場合でも、確実な対応が可能である。
社会実装を見据えた3MFの進化と業界からの期待
3MFは、プロトタイピングの枠を超え、正確性、コンプライアンス、安全性が求められる高リスク環境においても標準となりつつある。今後、AMの社会実装を加速する上で不可欠な「共通言語」として、3MFの役割はますます重要になるであろう。
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