様々な形状の通い箱を把持できるラティス構造の柔軟指を開発
北九州⾼専発ロボットスタートアップ、キックロボティクス株式会社は、通い箱(プラスチックコンテナ)をハンドリングするロボット用ソフトハンド(柔軟指)を開発した。パレタイズ・デパレタイズロボットでの活用を想定しているという。(上部画像は通い箱(プラスチックコンテナ)をハンドリングするロボット用ソフトハンド(柔軟指)出典:KiQ Robotics株式会社)
このロボット用ソフトハンドは、ラティス構造と呼ばれる複雑な立体の格子構造で構成されており、3Dプリンターでしか造形できない形状をしている。この構造によって耐久性をそのままに「やわらかさ」を実現し、複雑な箱の形状にならい安定した把持が可能となる。
通い箱を把持する際の課題
通い箱は規格によってその形状は様々だ。通い箱をロボットハンドでマテハンする際には、とくにリブと呼ばれる突起を避けて把持する必要があった。リブを把持してしまうと、接触部分に力がかかりすぎて箱が割れてしまうケースや、突起部分をしっかりつかめず滑り落ちてしまうことがあるためだ。
また突起等のある対象物を把持するロボットハンド素材として、ゲルやスポンジなどのやわらかい材料を使うことが考えられるが、一般的に耐久性があまりない場合があるので、すぐにボロボロになる懸念があった。
「点で把持すると壊してしまう」「柔らかい材料でロボットハンドを作ると寿命が短い」この2つの課題に対応する必要があった。
ソフトロボットハンドの2つの特徴で通い箱をしっかり把持
ロボット用ソフトハンドは、柔らかい樹脂材料にラティス構造を活用して造形することで、この課題を解決した。ラティス構造は、変形を適切に調整できるので、把持方向に対して大きく変形することで箱のリブ等の形状にならい、しっかりと把持する。一方で重力方向に対してはあまり変形せず垂れによる脱落を防ぐ。ラティス構造で、材料の異方性(物理的特性が方向によって異なること)を活用する。こうしたソフトだがしっかりとした把持を実現。その結果として、「面」で接触することで、損傷させることなく、通い箱を安定して把持することが可能となった。
ラティス構造のロボット用ソフトハンドは、強度のある素材を使って、変形を適切に調整し「やわらかさ」を実現しているので、高い耐久性能が期待できる。実際に、繰り返し変形させるテストを行い、約400万回の繰り返し変形後にも把持性能が変わらないことが分かっているという。
今回開発されたロボット用ソフトハンドは、通い箱の荷積み・荷下ろしを自動化するロボットでの活用に向けて、トヨタ自動車株式会社モノづくりエンジニアリング部での評価がすでに行われているという。
これまで、様々な規格・形状の通い箱が混載されている状況下では、「箱を安定して把持できない」ことや「箱が割れてしまう」ことがあり自動化が困難だったが、こうした課題を解決するために、ラティス構造のロボット用ソフトハンドが活躍できる。
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