2024年3Dプリンティングの市場成長と技術革新 ― プロトラブズ社
プロトラブス社(アメリカ)は設計開発支援から、金型含む樹脂射出成形、金属CNC切削加工、樹脂金属3Dプリンティング、シートメタル加工の試作から量産までを、自社工場と国内外の200以上の提携企業工場により、オンライン見積発注システムでサービス提供する企業だ。同社は2024年6月に自社ウエブサイト内で「3D Printing Trend Report 2024」を公開した。(上部画像はプロトラブズ社による3D Printing Trend Report 2024。出典:プロトラブズ社)
目次
3Dプリンティング市場の成長
3Dプリンティング市場は、2023年において26.8%の成長を記録し、22.14億ドル(約3,500億円)に達した。この成長は、前年度の17.46億ドル(約2,800億円)から大幅な増加であり、予測を大きく上回った結果である。この急成長は、航空宇宙、自動車、医療などの主要産業における3Dプリンティング技術の採用が進んだことが一因とされる。特に、製品の設計自由度や迅速なプロトタイピング能力が企業に高く評価され、導入が加速した。今後も21%の年平均成長率で市場規模が拡大し、2024年には24.8億ドル(約4,000億円)、2028年には57.1億ドル(約9,000億円)に達する見込みである。
生産レベルでの3Dプリンティングの普及
3Dプリンティング技術は、これまでプロトタイピングに主に使用されてきたが、近年では生産レベルでの利用が急増している。調査によれば、2023年には回答者の70%が前年よりも多くの部品を3Dプリンターで製造しており、生産量が安定していることが示された。特に、製造のリードタイム短縮やコスト削減といった利点が評価され、生産プロセスに組み込む企業が増えている。また、3Dプリンティング技術の進化により、エンドユース部品の製造が増加しており、特に交通やロボティクス分野での採用が顕著である。
3Dプリンティングの進化とともに、新素材と複合材料の開発も急速に進んでいる。エラストマー、導電性材料、生体適合性材料、UV感受性の低減材料など、さまざまな特性を持つ新素材が次々と登場、3Dプリンティングで製造可能な製品の幅が大きく広がっている。特に医療や電子機器分野において、新素材の導入が期待されており、これらの材料は製品の性能や耐久性を大幅に向上させる可能性がある。
ハイブリッド製造技術とマルチマテリアルプリント
ハイブリッド製造技術は、3Dプリンティングと従来のCNC加工などの技術を組み合わせたもので、製造の可能性を大きく広げている。複雑な形状や高精度が求められる部品の製造に適しており、特に航空宇宙や医療機器などの分野での採用が進んでいる。ハイブリッド製造技術により、製造プロセスの効率化やコスト削減が可能となり、製品の品質向上にも寄与している。
マルチマテリアルプリントは、異なる特性を持つ複数の材料を1つのプリントオブジェクトに組み込む技術である。製品の機能性やデザインの自由度が大幅に向上し、特に医療や電子機器の分野で注目されており、複雑なデバイスやセンサーの製造が可能となる。また、マルチマテリアルプリントにより、部品のアセンブリが不要となり、製造プロセスの効率化が図れる。
製造プロセスの自動化、AI技術の進化
3Dプリンティングの製造プロセスにおいて、自動化が進んでいる。コンピュータビジョンやサーマルセンサー、AIを活用した自動化システムにより、労働力の削減とコスト効率化が実現されている。製造のスピードと品質が向上し、一貫した製品の生産が可能となっている。また、ワークフローの自動化により、3Dプリンティングの各段階を連携させ、効率的な生産プロセスを構築することができる。
また、AI技術の進化は、3Dプリンティング分野にも大きな影響を与えている。AIを活用することで、設計支援や品質管理、製造プロセスの最適化が可能となり、効率的な生産が実現されている。例えば、非平面FDMプリンティングでは、AIがGコード生成を支援し、階段効果の最小化やサポートの除去、垂直強度の向上が図られている。また、AIはコンピュータビジョンやセンサーと連携し、リアルタイムでの製造プロセスの監視と制御を可能にする。
マイクロ3Dプリンティングと大型3Dプリンティングの進化
マイクロ3Dプリンティングは、微細な部品や構造の製造に特化した技術であり、特に医療や歯科分野で注目されている。この技術は、従来の製造方法では実現不可能な複雑な形状や微細なディテールを持つ部品を作成することができる。投資が進むことで、マイクロ3Dプリンティングの応用範囲が広がり、新しい治療法や医療機器の開発が進展している。また、この技術はエレクトロニクス分野でも利用が拡大しており、高性能なマイクロデバイスの製造が可能となっている。
大型3Dプリンティングは、建設、航空宇宙、自動車などの分野での利用が進んでいる。この技術により、大型部品や構造物の製造が可能となり、従来の製造方法では実現できなかった規模と複雑性を持つ製品の生産が実現されている。例えば、建設分野では、3Dプリンティングを用いて住宅や橋梁などの大規模構造物が迅速に作られている。また、航空宇宙分野では、大型の金属部品が精密かつ迅速に製造されることにより、機体の軽量化や設計自由度が向上している。この技術の進化により、製造業全体が効率化され、コスト削減や生産性の向上が期待されている。
3Dプリンティングの現状と将来
プロトラブズネットワークのロビン・ブロックオッター氏は、知識と教育の普及に伴い、機会と新しいアイデアがこのセクターを変革し続けると以下のように指摘している。
「我々はまだ3Dプリンティングの全能力と利用ケースに精通していない時期にいる。しかし、将来の世代のデザイナーやエンジニアが3Dプリンティングの能力について学び、労働力に加わるにつれ、これらの革新はますます一般的になるだろう」
開発の速さが普通になると、製造業全体も急速にそれに追従していく。示されたイノベーションへの近道には、エンジニアにとって、カタチになるまでの時間の中ですべてのアイデアを現実にする可能性を含む。
本レポートを作成するにあたり、プロトラブズ社は様々な情報源から市場動向データを収集したという。これには、2023年の3Dプリンティング市場を評価した複数の主要市場分析会社の数値、プロトラブズネットワークに関与した700人以上のエンジニア、デザイナー、製造業者、その他の人々への調査、および業界専門家へのインタビューが含まれるとのことだ。
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