大林組、シンガポールに新たな研究開発拠点「Obayashi Construction-Tech Lab Singapore」を開設
大林組は2023年10月、シンガポールに「Obayashi Construction-Tech Lab Singapore」(以下、OCLS)を開設した。アジア地域の建設技術の研究開発と適用支援を目的とし、建設ロボティクスや3Dプリント技術など、先端技術の開発と普及を推進する。「OCLS」では、現地の大学や企業と連携し、建設現場の自動化や持続可能な材料の開発に取り組む。(上部画像は大林組のプレスリリース。出典:大林組)
「OCLS」開設の背景と目的
大林組がシンガポールに「OCLS」を開設した背景には、アジア地域における建設技術の進化と自動化へのニーズがある。シンガポールでは、外国人労働者の不足が深刻化し、省人化と生産性向上が重要な課題となっていた。この課題に対応するため、シンガポール建築建設庁(以下、BCA)主導で技術開発が進められており、大林組もこの流れに乗り設立。「OCLS」の目的は、アジア地域の建設現場における最新技術の研究開発と適用支援を行い、地域の建設業界全体の技術力を向上させることである。
「OCLS」の施設概要
「OCLS」は、BCAのBraddell Campus内に2023年10月に開設された、オープンイノベーション施設「Built Environment Innovation Hub(BEIH)」に入居している。施設内には、多くの建築・環境関連のテクノロジー企業が集結していて、入居者共用の実験空間やカンファレンス施設なども整備されており、研究開発活動の基盤となる。シンガポールやアジア地域の大学、研究機関、建設会社、スタートアップと連携し、先進技術の開発と実用化を推進するための拠点である。
主要な研究開発プロジェクト
アジア諸国スタートアップとの建設自動化技術の現場実証および適用促進:「OCLS」では、アジア諸国の建設自動化スタートアップと連携し、大林グループ現地法人の建設現場で技術検証と適用促進を実施する。BCAの補助金〔Productivity Innovation Project(PIP) incentive scheme〕を活用し、中国のロボットメーカーFang Shi Technology製のコンクリートならし・コテ押さえロボットを導入し、コンクリート打設時の生産性向上を検証する。
南洋理工大学シンガポール3Dプリントセンターとの建設3Dプリント技術の研究開発:シンガポールの南洋理工大学の3Dプリント技術研究組織シンガポール3Dプリントセンター(以下、SC3DP)に共同研究室を設立し、日本国内で培った技術とSC3DPが有する技術を融合し、建設業における3Dプリント技術の適用拡大を図る。この共同研究では、持続可能な建設材料の開発や、機械式継手、複合材料部品などの3Dプリント技術の開発を進める。
シンガポール工科デザイン大学との建設ロボティクス活用の研究開発:先端ロボティクス技術を持つシンガポール工科デザイン大学と協力し、革新的な次世代建設プロセスの確立と実用化を目指した共同研究を行う。センサーとAIを活用して建設現場をマッピングし、建設現場をロボティクス技術適用に最適化する方法を研究するほか、複数の建設現場で同時にロボットを遠隔管理できるプラットフォームの開発も行う予定である。
地域エコシステムの構築と展望
さらにシンガポールを起点としたアジア地域の研究開発エコシステムの構築も計画している。地域の大学や研究機関、企業との連携を強化し、技術開発の成果を積極的に社外へ展開することで、技術の普及と応用を促進する。また、建設ロボティクスや3Dプリント技術だけでなく、持続可能な建設材料や次世代建設プロセスの研究にも注力し、地域の建設業界全体の技術力向上に寄与することを狙っている。大林組は、このエコシステムを通じて、未来を拓く技術開発を加速させ、グローバルな社会課題の解決に貢献する考えである。
大林組の関連記事
今回のニュースに関連するものとして、これまでShareLab NEWSが発表してきた記事の中から3つピックアップして紹介する。ぜひあわせてご覧いただきたい。
国内外の3DプリンターおよびAM(アディティブマニュファクチャリング)に関するニュースや最新事例などの情報発信を行っている日本最大級のバーティカルメディアの編集部。