3Dプリント建築用断熱材として廃棄衣類をリユースーMAT一級建築事務所・ワークスタジオ
衣類リサイクル製品「PANECO」を展開するワークスタジオは、MAT一級建築士事務所と提携し、衣類再利用の実験を行った。3Dプリント建築に用いる断熱材として、廃棄衣類を活用する本事業は、脱炭素、脱廃棄に貢献できる活動だ。
アパレル産業は環境汚染産業2位
気候変動対策への関心が高まる中、アパレル産業も槍玉に上げられることが増えてきた。
国連貿易開発会議(UNCTAD)の報告によれば、アパレル業界は世界2位の環境汚染産業だと言われている。加えて、発展途上国での厳しい労働環境も課題だ。安く作り高く売るために生産国に負担を強いる、というグローバルアパレル産業のいままでの常識は、消費者の倫理観と相反する。
こうした背景から、原料の回収・再利用により、地球環境負荷を抑え、環境に優しい製品をアピールするアパレル企業が増えてきた。廃棄される衣類が減れば、焼却処分によって大気中に放出されるCO2も減少する。大きな産業であるからこそ、全体に環境意識が広まっていけば、地球温暖化を抑止するに十分な貢献になりうる。
廃棄衣類を断熱材として活用
ワークスタジオがMAT一級建築士事務所と共同で行った実験は、廃棄衣類を建築用断熱材としての再利用するものだ。3Dプリンターで建築する建造物に、衣類から再利用した断熱材を用いることで、衣類廃棄量の削減を目指す取り組みだ。
いままでもワークスタジオ社は、繊維リサイクルを推進する再生製品「PANECO」を展開してきた。アパレル業界における余剰在庫を活用し、木材と複合させて作るPANECOは、素材の色彩を反映したカラフルな意匠と加工性の良さを特徴としてきた。
またMAT一級建築士事務所は、3Dプリンターで建築した住居として国内で初めて、建築基準法における確認済証の交付を受けている実績がある。これまでにも3Dプリンターメーカーと協力し、3Dプリンターの可能性を建設業に拡大する取り組みを進めてきた。
脱炭素と脱廃棄
通常、断熱材はシート形状で販売され、住宅の骨組みに貼り合わせるように用いられる。
しかし、衣類をリサイクルして断熱材とする場合、シート状に加工するためもコストが必要だ。折角材料費を安く抑えられる製品であるにも関わらず、加工費用が高くなってしまえば、広範な活用が期待できない。
一方で、3Dプリンターで作る住宅は、外壁内部に多くの空洞を有する。よって、中に断熱材を詰め込み、封入するだけで高い断熱効果が期待できるという。
断熱材をシート状に加工せずともよい、という利点は、3Dプリンターならではと言えるだろう。
高い断熱効果を有する住宅は、夏季や冬季における室内外の温度差を高く保つことが可能だ。これは空調のエネルギー効率を高め、脱炭素社会に貢献する。同時に、焼却処分するはずだった廃棄衣類を燃やさず留めることで廃棄物削減への貢献が期待できる。
法制度への対応という壁を乗り越え始めた日本の建築用3Dプリンター。従来工法と大きく異なるアプローチである3Dプリンターによる住宅建築では、住宅の形状や利用される建材でも、従来の日本の住宅建築と大きな違いがでてくるだろう。3Dプリンターの持つ高い自由度が、これまで住宅用建材に用いられなかった材料にも光を当てることになるかもしれない。
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