慶応義塾大学と共同で作る3Dプリント住宅「フジツボモデル」-セレンディクス
セレンディクス株式会社(以下、セレンディクス)は、慶応義塾大学の研究グループと共同で、3Dプリント住宅「フジツボモデル」を設計した。24時間以内の施工完了、単一素材で費用を抑えるなど、3Dプリンターを最大限に生かした設計が特徴だ。フジツボモデルは2022年内の完成を目指す。
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セレンディクスの歩み
セレンディクスは3Dプリンターを用いた住宅建設プロジェクトを推進するスタートアップ企業だ。今年3月には、「24時間以内に3Dプリンターで住宅を建設する」という目標を達成した。
>>「家を24時間で創る」を実現 – セレンディクス・パートナーズ
人やモノの流動性が増し、「家を買って一か所に定住する」というライフプランが崩壊しつつある昨今、セレンディクスは3Dプリンターを使った「未来の住宅の在り方」を提示する。
3Dプリンターは住宅の価格を破壊的に引き下げるポテンシャルを持つツールだ。現在私たちがマンションの一室を借りるような気軽さで、3Dプリント住宅を購入する日が来るかもしれない。
セレンディクスは誰もが快適な住環境を手にする将来へ向かって、着実に歩を進めている。
>>3Dプリンターで24時間以内に家を作る『住宅の再発明』-セレンディクス・パートナーズ
技術面・居住面・価格面の革新
セレンディクスの次なる目標は、実際に人が住める住居の建設だ。
同時に、未だ本領を発揮しきれていない3Dプリンターの潜在能力(低価格、迅速性)を最大限活用することも課題となる。これまでの3Dプリンター住宅建設では、施工期間が1~3カ月必要で、人件費も従来の30-50%程度の削減に留まっていた。
セレンディクスは慶応義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターに研究・設計・監修を依頼して、上記の課題解決を目指す。プロトタイプは2022年内に完成する予定であることを発表した。
慶応義塾大学のグループが提示した「フジツボモデル」には技術面で様々な工夫が施されている。こうした工夫は、居住面や価格面に革新的な変化をもたらすものだ。
- 技術面
・日本の建築基準法に準拠
・24時間以内に施工完了
・人の作業を不要とする単一素材で複合機能を持たせた3Dプリント住宅を実現 - 居住面
・30m2―100m2の広さ
・1階建て平屋 高い天井のある快適な室内
・構造強度・耐火性・耐水性・断熱の担保 - 価格面
・販売価格を通常の住宅価格の1/10、車が買える500万円を目指す
室内側に3Dプリンターを設置することで、施工作業の効率化を図るというアイデアも新しい。上部が開口しており、形状は確かにフジツボに似ている。非常に合理的で実用的なデザインだ。
購買ターゲットと社会課題解決の取り組み
フジツボモデルは、60代夫婦2人暮らしを購買ターゲットに設定していることも興味深い。これはコロナ禍による住宅ローン破綻が増え、多くの返済困窮者が生じている現状を反映している。
セレンディクスは、自然災害被災者の救済や脱炭素社会の実現など、社会が抱える課題に取り組み、その解決を図ってきた。そこには、3Dプリンターを用いて社会に貢献しようとする強い意志が感じられる。
3Dプリンター住宅の先駆者として、また、社会をより良い方向へ変えていく力として、今後の活躍に期待したい。
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