3D Systems、診療現場で製造する患者別チタン製頭蓋骨プレートのFDA認可を支援

2026年9月25日
出典:3D Systems
出典:3D Systems

3D Systemsは2026年7月28日、米国国防保健局(DHA)およびWalter Reed National Military Medical Centerの3D Medical Applications Center(3D MAC)が開発した「3D MAC Titanium Cranial Plate(TCP)System」について、米国食品医薬品局(FDA)の市販前承認取得を支援したと発表した。同システムは、診療現場で製造されるインプラントとして初めてFDA認可を取得した医療機器となる。

診療現場で患者別のチタン製頭蓋骨プレートを製造

今回FDA認可を取得した3D MAC Titanium Cranial Plate Systemは、患者ごとに設計されたチタン製頭蓋骨プレートを診療現場で製造するためのシステムである。外傷性頭部損傷を負った米国の現役軍人や戦闘員の治療への使用が予定されており、世界各地での活用が想定されている。

開発を担当した3D MACは、Walter Reed National Military Medical Centerを拠点とする医療組織である。軍人や退役軍人を対象とした患者別医療を支援しており、患者ごとの解剖モデルや手術ガイド、インプラントなどを専門としている。

今回のFDA認可は、臨床環境におけるアディティブマニュファクチャリング(AM)の活用拡大を目的に、3D Systemsと3D MACが複数年にわたって進めてきた共同開発の成果である。

3D Systemsの社長兼CEOを務めるJeff Graves氏は、診療現場での製造について、パーソナライズされた医療機器を患者により近い場所で提供することで、今後のヘルスケアを変えていく可能性があるとの考えを示している。

3D Systemsが品質管理からFDA申請まで支援

今回の取り組みで3D Systemsが担当したのは、AM技術の提供だけではない。

同社は3D MACと連携して品質管理システム(QMS)を構築するとともに、医療機器の設計や検証、プロセス制御、デバイス設計の最適化、AMワークフロー、規制戦略、FDAへの申請など、開発ライフサイクル全般を支援した。

これにより、コンセプト段階から、診療現場で製造可能なFDA認可インプラントへと移行する体制が構築された。

3D Systemsで患者別医療テクノロジーの製品開発マネージャーを務めるNatalie Byrnes氏は、今回の認可について、臨床現場での取り組みとAMおよび規制遵守に関する専門知識を組み合わせることの有効性を示すものだとしている。

診療現場で製造するインプラントとして初のFDA認可

今回の認可は、診療現場の医療機関に付与された初のFDA認可インプラントである。また、3D MACにとっても初めてFDA認可を取得した医療機器となった。

患者別インプラントでは、患者のCTなどの医療画像をもとに形状を設計し、AMによって個々の患者に合わせた製品を製造できる。一方、医療機器として実際に使用するには、造形技術だけでなく品質管理や製造プロセスの再現性、規制対応などを含めた体制の構築が必要となる。

今回の事例では、医療機関が患者別医療機器のコンセプト策定から設計・製造、規制当局の認可取得まで進めるプロセスを3D Systemsが支援した点も特徴である。

3D Systemsは今回の成果を通じて、米国国防保健局および退役軍人省との関係をさらに強化し、患者別医療機器の製造に関する今後の取り組みを支援していく方針だ。

今回の認可は、申請番号「K253116」としてFDAのウェブサイトに掲載されている。

3D Systemsについて

3D Systemsは、Chuck Hull氏が開発した3Dプリンティング技術を起点として約40年にわたり事業を展開してきた米国の3Dプリンターメーカーである。

現在は医療・歯科、航空宇宙・防衛、輸送、モータースポーツ、AIインフラストラクチャ、耐久消費財などの市場を対象に、3Dプリンター、材料、ソフトウェアなどを提供している。特に医療分野では、患者別の解剖モデルや手術器具、インプラントなど、AMを活用した患者別医療に取り組んでいる。

編集部コメント

医療分野における3Dプリンティングでは、患者ごとの形状に合わせたインプラントを製造できることが大きな利点の一つである。今回注目したいのは、患者別インプラントそのものだけでなく、それを「診療現場で製造する」仕組みがFDA認可を取得した点だ。

これまで患者別医療機器の製造は、専門メーカーなど外部の製造拠点で行われるケースが中心だった。医療機関側で設計・製造から品質管理までを担える仕組みが広がれば、AMの役割は「医療機器を製造する技術」から「医療機関の中に製造機能を構築する技術」へと広がる可能性がある。

一方で、医療機関でインプラントを製造するには、造形精度だけでなく、品質管理や工程の再現性、トレーサビリティ、規制への対応なども欠かせない。今回3D SystemsがQMS構築から規制申請まで関与したことは、こうした診療現場でのAM活用を考えるうえでも重要なポイントといえる。

用語解説

アディティブマニュファクチャリング(AM)
3Dデータをもとに材料を一層ずつ積み重ねて立体物を製造する技術。一般に3Dプリンティングとも呼ばれる。切削加工などでは製造が難しい複雑形状や、患者ごとに異なる形状を持つ医療機器の製造にも活用されている。
患者別インプラント
CTなどから取得した患者の解剖学的データをもとに、個々の患者に合わせて設計・製造するインプラント。AMは個別形状を追加の金型などを使用せず製造できるため、患者別医療との親和性が高い。
Point-of-Care(診療現場)製造
医療機器などを外部の製造拠点だけでなく、病院など患者の治療を行う場所またはその近くで製造する考え方。AMの普及によって、解剖モデルや手術ガイド、患者別インプラントなどを医療機関側で製造する取り組みが進められている。
QMS(Quality Management System)
製品の品質を継続的に確保するための品質管理システム。医療機器では、設計・製造・検査・記録など各工程を適切に管理し、一定の品質を維持するための重要な仕組みとなる。

医療業界の関連記事

今回のニュースに関連するものとして、これまでShareLab NEWSが発表してきた記事の中からピックアップして紹介する。ぜひあわせてご覧いただきたい。

関連記事を探す

記事検索

2080の記事から探す

最新記事

編集部のおススメ記事