セレンディクス株式会社(以下、セレンディクス)は、福島県須賀川市と「災害時における住宅等の供給に関する協定」を締結した。3Dプリンター技術を活用した住宅供給に関する災害時協定としては、須賀川市とセレンディクスの共同調査によると全国初の取り組みとなる。
本協定では、災害発生時や発生のおそれがある場合、市の要請に応じて3Dプリンター技術を活用した応急仮設住宅や復興住宅、即時設置型避難所、休憩・救護施設などを優先的に供給する体制を整備する。平時から自治体と情報共有を行うことで、有事に迅速な住宅供給を実現することを目指す。
目次
平時からの連携で災害時の住宅供給を迅速化
協定は2026年7月28日に締結された。有効期間は2027年3月31日までで、その後は1年ごとの自動更新となる。
供給対象となるのは、3Dプリンター技術を用いて建設される応急仮設住宅、復興住宅、即時設置型避難所、休憩・救護施設、および関連設備である。
また、平常時には住宅の仕様や施工期間、供給可能棟数などの情報を須賀川市へ提供し、災害発生時に速やかに供給できる体制づくりを進める。
災害時の応急住宅は、資材や施工人員の確保、現地工事に時間を要することが課題となっている。さらに近年は人手不足や資材価格の上昇も重なり、災害発生後に供給体制を整えるだけでは迅速な対応が難しくなっている。
工場での事前製造と現地組立で工期短縮
セレンディクスは、工場で住宅パーツを事前に製造し、現地では短時間で組み立てる建設用3Dプリンター工法を採用している。この方式により、省人化と工期短縮の両立を図ることができるとしている。
同社は2024年9月、2人世帯向け住宅「serendix50」の販売第1号棟を石川県珠洲市に復興住宅モデルとして建設しており、被災地での住宅供給に関する知見を蓄積してきた。
さらに2026年6月には、3Dプリンター建築事業を研究開発フェーズから量産フェーズへ移行。今後1~2年で累計100棟超、5年以内には年間1,000棟超の建築を目標として掲げている。
復興住宅としての活用を見据える
Co-founder兼CTOの飯田國大氏は、3Dプリンター建築の価値は「速く、安く建物をつくること」にとどまらず、災害で住まいを失った人々の生活再建を支える復興住宅として活用できる点にあるとコメントしている。
また、能登半島地震の被災地である石川県珠洲市で復興住宅モデルを建設した経験から、災害発生後に供給体制を整えるのでは遅く、平時から自治体と連携して備えることが重要であるとの考えを示した。
同社は今後、須賀川市との取り組みを起点に、全国の自治体との連携を拡大し、災害時の住宅供給体制の構築を進めていく方針である。
住宅以外にも広がる3Dプリンター建築
セレンディクスは2018年創業の日本初の3Dプリンター住宅メーカーである。
2022年には日本初の3Dプリンター住宅「serendix10」を発表し、2024年には石川県珠洲市で復興住宅モデル「serendix50」を建設した。
現在はウクライナで3Dプリンター建築による復興支援プロジェクトを進めるほか、2025年にはJR西日本グループと駅舎建設を実施するなど、住宅以外の建設分野にも事業を広げている。
編集部コメント
3Dプリンター住宅は住宅不足や建設業界の人手不足への対応策として注目されてきたが、今回の協定はその活用範囲を防災・復興分野へ広げる取り組みといえる。特に平時から自治体と供給体制を整備する点は、災害発生後の初動を大きく左右する可能性がある。
セレンディクスは量産フェーズへの移行を進めており、今後ほかの自治体にも同様の取り組みが広がるかが注目される。
用語解説
| 3Dプリンター住宅 |
|---|
| 建設用3Dプリンターを用いて壁などの構造体を製造し、住宅を建築する工法。工場で部材を製造し現地で組み立てる方式などが採用され、省人化や工期短縮が期待されている。 |
| 応急仮設住宅 |
|---|
| 災害によって住居を失った被災者が一時的に生活するために整備される住宅。迅速な建設と居住性の確保が重要となる。 |
| 復興住宅 |
|---|
| 災害後の生活再建を目的として建設される恒久的な住宅。応急仮設住宅とは異なり、中長期的な居住を前提として整備される。 |
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